「カンヌ国際広告祭」のテリー・サベージ会長はこのほど来日し、2011年6月の次回開催時から、「広告」の文字を名称からはずすことを明らかにした。「広告だけではくくれなくなった」として、クリエーティブの祭典として再スタートを切る(注)。また、ブランドの価値向上や商品の販売への貢献度を評価する「クリエーティブ・エフェクティブネス」部門を新設することも明かした(以下インタビュー)。
カンヌは広告界の今を映す「鏡」
カンヌはこれまでもPRやデザインの部門を新設するなど、年々カテゴリーを拡大している。それに伴い、アドマンにとどまらず、様々な人が同じフィールドに集まるようになった。そこではメディアに携わる人がデザインなど他の分野からアイデアを得るなど、クロスオーバーが進んでいる。クリエーティブを学びたい広告主の参加も増え、近ごろでは全体の15%を占めている。
このような中で、もはや「広告」ではなく上位概念としての「クリエーティブ」でくくるべきだと判断した。10月末、各国の代表社がロンドンに集まる会議の場で発表した。
カンヌはトレンドをリードする存在ではない。広告界の今を映す「鏡」だととらえている。近年は毎年のように新しい部門を発表しているが、いずれも導入までに3~6年ほどかけて検討を重ねた。広告界のリーダーに接触して意見を聞いたり、十分な調査を行うなどして、本当にニーズがあるかを判断している。
各部門のエントリー数の推移からも、広告界を取り巻く状況をとらえることができる。サイバー部門への応募が増加している一方で、プレス部門など従来メディアが減っていることもその一例だ。プロモ&アクティベーション部門にいたっては、2009年から2010年にかけて4割増えた。「広告」という表現をやめ「クリエーティブ」にしたことも、広告の枠で語りきれなくなった現状を映しているといえるのではないか。
効果への十分な裏付け求める
新設する「クリエーティブ・エフェクティブネス」部門は、広告主のビジネスに対して具体的に測定できる結果を出したかどうかを審査するものだ。クリエーティビティーと効果の両面から評価されたものに贈られる。
エントリーのためのハードルは高い。他部門は英単語100語分ほどの説明文やビデオを用いて応募するが、この部門は3000語以内としたほか、データなどの裏付けを求めている。さらに、応募対象を前年度にショートリスト以上に選ばれた作品に限定している。審査員は、ストラテジックプランナーや広告主が務める。大変な審査になるはずだ。(談)
(注)これまで“CANNES LIONS International Advertising Festival(カンヌ国際広告祭)”としていた名称を、“CANNES LIONS International Festival of Creativity”に変更する。なお、日本代表の東映エージエンシーによると、日本語の公式名称は検討中としている。