「コピーライター+アートディレクター+?」

遡って見てみると、かつて在籍していた180(ワンエイティー)では、ことさらインタラクティブという名目ではないですが、ノントラディショナルなアイデアを足す「3人目のクリエーティブ」として僕はチームに参加していました。でもこのやり方は個人のスキルに強く依存していることから、小さな成功は作れても、大きな流れや新しいプロセスを作るには至りませんでした。

Old Spice

BBHでは逆にトラディショナルなアートディレクターという肩書きでしたが、不文律で結構自由にインタラクティブな仕事を任せてくれていました。しかしBBHのプロセス上、インタラクティブについて知識はあるけど実際の制作経験はないプランナーたち(ちなみに最近アメリカではこういう人々を揶揄してDigital Ninjaと呼んでいます)に多くの権限があった点に問題がありました。そのせいで、完成したものがロジックでは正しいけれどクリエーティブ的には面白くないものになってしまう事態が散見されました。

上記のようなトライアル&エラーを経て、僕は以前も書きましたがクリエーティブディレクターとテクニカルディレクター/プロデューサーのチームがこれからの理想のチームのありかたなんじゃないかと思っています。もっというと、インタラクティブの世界では当たり前の、アイデアを考えた人が自ら作るというプロセスやDIY精神、そして創造と制作が本来不可分であるという事実をみんながきちんと理解しないといけない。これは全部を自分一人でやらないといけないということでは決してなくて、そういった不可分な要素を理解した上でチームを組んで制作するのが必要だということです。

もちろん、そもそもトラディショナルとインタラクティブとを区別するのがあまりにも遅れているとおっしゃる方も多いと思います。僕も同感です。しかしそういう人は僕なんかに言われなくてもすでにそういった創作をしているのだと思います。メディアの新旧にとらわれずに、アイデアに従って視聴者に味わってほしい体験を作り出すのに必要なメディアを選べばいいだけのことなんだし。ただ、それを個人の気づきにとどめずに、より大きなエージェンシーや広告という枠組みをシフトさせるためには、今はまだその区別があることをきちんと見つめた上でネクストステップを考えないといけないと思っています。そのために今ワイデン+ケネディNYでいろいろと試行錯誤しているところです。願わくは近々その成果をみなさんにお見せできれば嬉しいなと思っています。

川村真司「世界のクリエーティブ」バックナンバー
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川村 真司(PARTY Creative Director / Founder)
川村 真司(PARTY Creative Director / Founder)

2002年、CMプランナーとして博報堂に入社。2005年に英広告会社BBHの東京オフィス立ち上げに参加し、2007年にオランダ・アムステルダムの180(ワンエイティー)へ。米ニューヨークのBBHを経て、2010年9月からWieden+Kennedy New York クリエーティブ・ディレクター。2011年6月に伊藤直樹氏、原野守弘氏、清水幹太氏、中村洋基氏と「PARTY」を立ち上げ現職。
アディダス、プレイステーション(ソニー)、日産自動車、アックス(ユニリーバ)、グーグルなどのグローバルキャンペーンを手掛けつつ、「Rainbow in your hand」といったブックデザイン、SOUR「日々の音色」ミュージックビデオのディレクションなど活動は多岐にわたる。カンヌ国際広告祭やNY ADC、ワンショー、D&ADなどで受賞。

ウェブサイト: http://www.masa-ka.com/

川村 真司(PARTY Creative Director / Founder)

2002年、CMプランナーとして博報堂に入社。2005年に英広告会社BBHの東京オフィス立ち上げに参加し、2007年にオランダ・アムステルダムの180(ワンエイティー)へ。米ニューヨークのBBHを経て、2010年9月からWieden+Kennedy New York クリエーティブ・ディレクター。2011年6月に伊藤直樹氏、原野守弘氏、清水幹太氏、中村洋基氏と「PARTY」を立ち上げ現職。
アディダス、プレイステーション(ソニー)、日産自動車、アックス(ユニリーバ)、グーグルなどのグローバルキャンペーンを手掛けつつ、「Rainbow in your hand」といったブックデザイン、SOUR「日々の音色」ミュージックビデオのディレクションなど活動は多岐にわたる。カンヌ国際広告祭やNY ADC、ワンショー、D&ADなどで受賞。

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