情報を自ら「取捨選択」する機会に
ネットレイティングスは3月29日、「震災の影響により首都圏ライフライン関連サイトの訪問者が大幅増」というレポートを発表した。それによると、3月11日の東日本大震災発生時には、Yahoo!天気情報やNHKなどのニュースサイトのほか、東京電力やJR東日本などのライフライン情報が閲覧者数を大幅に伸ばしていたということである。これはニュースなどのマス向け情報のほかに、自分の生活に直接関係ある情報を積極的に取りに行くという、インターネット型のライフスタイルが定着してきた一つの表れではないかと感じている。
また4月18日に更新されたNielsen Netviewのレポートを分析すると、安否確認情報などでその利便性が見直されたソーシャルメディアの活用が大きな伸びを示している。このデータをもとに、各種Webサービスの利用について2月の利用者数を100%としてグラフを作成したところ、フェースブックは昨年来維持している伸び率とほぼ変わらないのだが、ツイッターやミクシィは以前と比べて大幅に伸びており、アメーバやライブドアなどのブログもわずかながらも伸びをして示していることが注目に値する(下図)。これは情報を受けるだけではなく、自ら情報あるいは見解を拡散し、または他人の意見を取り込もうとする姿勢が見られるからである。すなわちこの1カ月で情報の取捨選択能力「情報リテラシー」が格段に向上した可能性があるのではなかろうか。
ネットの活用を考える上でのひとつ目の大きなトレンドは、まさにこの「情報リテラシーの向上」であろう。非常時で前例がないことではあるが、特に原発からの放射性物質をめぐる問題などはニュースで流れてくる情報だけでは心配になる人も多かろう。そのため、テレビでは放送されない情報や専門家の意見がインターネット上で拡散されていく構造ができ上がったのではないだろうか? ネット上の情報は、デマや誤解が多く存在するためにそれを取捨する能力が要求され、かかわることで自然にその能力は高められてゆくものである。企業のマーケティングも今後は訴えるだけではなく、その訴えをサポートする事実をWeb上に載せることが重要になってくるのではなかろうか?
2つ目のトレンドは以前にもこのコラムで書いた「スマートフォンやタブレット端末の普及」である。というのもそれらはリアルタイムで情報を取り込み発信してゆくには格好のツールであるからである。(当連載のコラム「国内でもスマートフォン・タブレット端末向けの施策が本格化の兆し」を参照)。現に量販店などでは、携帯電話の新規契約でスマートフォンが従来型機種の販売を上回ったとの話も聞かれるようになった。2011年はビジネスユースを中心に、スマートフォンとタブレットが大きく躍進する年になるであろう。そうなると、電車通勤が中心の日本の都市では鞄の中のスペースが限られているため、雑誌や新聞がその犠牲になってゆくのではなかろうか。(次ページに続く)