住宅・不動産や旅行、就職・転職など、数多くの情報サイトを運営し、インターネット広告への出稿量も国内最大規模を誇るリクルート。アドサーバーを自社運用することで、広告配信の最適化に効果を挙げている。アドネットワークの活用について友澤大輔氏に聞いた。
(「宣伝会議」7月1日号に特集「テクノロジーが創造する新しい広告市場――アドネットワーク最新動向」を掲載)
第三者配信の活用で運用効率化
リクルートでは4年前から、第三者配信のアドサーバーを自社で運用して広告配信を行っています。広告主によるアドサーバーの運用は米国ではすでに一般的ですが、日本ではまだ少ないのが現状です。
そもそも第三者配信に切り替えたのは、掲載までのスピードアップが大きな要因でした。広告会社に原稿を渡して媒体社のアドサーバーから入稿するという従来の方法では、チェックなども含め掲載までに1~2週間かかるのが普通です。ところが、同じクリエイティブのバナー広告を出し続けていると、2週間程度で効果が下がってしまいます。
バナー広告のCTR(クリック率)はおよそ0.1%などと言われていますが、では99.9%の広告はムダなのか。そんなことはないと思っても、従来の方法ではその波及効果を検証することはできませんでした。広告閲覧者のその後を追跡できることは、広告効果を検証する際に大きなメリットです。
ネット広告市場全体でリスティング広告への需要が増し、単価が上昇傾向にあったことも背景としてありました。当社の出稿はかなりの量に上るので、ヤフーやグーグルが単価を上げたとすると大きな影響を受けてしまいます。
第三者配信を始めた当初は、個別に媒体社と価格交渉して、条件に見合った単価で出稿するなどしていましたが、今は複数のアドネットワークを使っています。
テレビとネット、使い分けで奏功
効果はすぐに出ました。CTRで従来比約5倍、10倍といった数値が出ています。特にリターゲティングでは10倍は珍しくありません。期待した効果が出ないと思ったら、すぐに止められることもメリットです。
私は第三者配信の導入は、運用の手間を除いたらデメリットはないと考えています。今後、各事業者間の広告在庫の調整を仲介する「アドエクスチェンジ」が普及したら、すでに購入した広告在庫を、もっと効果の見込める広告主に販売することもできるようになるはずです。ある程度ネットに出稿している広告主にはぜひ勧めたいですね。
もっとも、ネット広告はニーズがすでに顕在化している人を連れてくるのが得意なのであって、新しい顧客をつくるのは得意ではないことも理解しています。リクルートは最近、テレビCMの出稿を増やしていますが、ブランドの認知を高めるのはやはりテレビの役割なのです。
ネット広告をテレビや新聞、屋外広告などといかに組み合わせられるかがポイントです。そのためにも、自社でデータを蓄積しておくことが役立つと考えています。(談)