美容系マルチメディア商品の代名詞的存在が、累計260万部を出荷した、宝島社の『スッキリ美顔ローラー』(10年7月発売)。同社は80年代からマルチメディア商品を販売しており、現在では主力事業と捉えて拡充を進めている。
マーケティング本部広報課の山﨑あゆみ氏は、近年の美顔ローラーのヒットなどを受け、出版社が持つ流通網の魅力を再認識している。「書店という販路は当社にとって財産。出版流通網は全国で約5万9000軒の書店とコンビニを抱え、世代を問わず意識の高い生活者が訪れる」。
一方で、既存の好環境に甘んじてマーケティングの意識が低いことも業界の課題と捉えていた。そのため、同社では出版業を“出版流通を活用できる業界”と定義し、07年よりマーケティング活動を重視。「マルチメディア商品やブランドムックもその一環で、雑誌や書籍と同等の“コンテンツ”と考えている。編集力を活かし、“モノ”に付加価値を与えて提供できるのが強みです」。
宝島社のヒットにいち早く続いたのが幻冬舎だ。同社は、20~30代前半を読者層に持つ女性誌『GINGER』ブランドのもと、美顔器メーカーのエステナードとコラボレーションして『GINGERビューティBOOK イオン美顔器とホットジンジャージェル付き 小顔の作法』を10年11月に発売。同社の雑誌・広告本部 広告局長の藤村友信氏は、同商品発売の背景について、「電子書籍普及の流れに対し、リアルでないと意味のない(デジタル化できない)商品を売っていこうという機運が出版社、書店ともに高まっていたため」と話す。
「『GINGER』は美容コーナーの人気が高かったため、今回はそのエクステンション的な位置付けの商品として開発された。美容系マルチメディア商品には、書店で買える手軽さと雑誌ブランドの安心感が伴い、さらに書店の美容誌売場には、美容に関心の高いセグメントされた読者が集まる。効率的なマーケティングが行える商品として注目している」。
同社では09年にも『バンド1本でやせる!巻くだけダイエット』が160万部のヒットとなるなど、マルチメディア商品開発のノウハウを持っていた。「売上を立てるという目的に対し、活字だけの時代よりも商品形態の選択肢が増えている。今後も雑誌のブランド力を水平展開するなどして新商品を開発し、書店と出版業界の活性化にも貢献できれば」。
出版社発の美容グッズというと女性誌との関連を思い浮かべるが、11年1月に『コロコロ美顔エステ』を発売した竹書房は女性誌を発行していない。しかし同商品は発売2カ月で20万部を発行し、『アットコスメ』の美容器具部門で11年上半期ベストコスメ1位を受賞。同社 営業部・山崎淳子氏によると、12年からはマルチメディア商品の専属部門を立ち上げ、特に女性向け・ファミリー向け商品の展開を拡充するという。
書店は目的買いだけでなく、習慣や暇潰しで訪れる生活者も多い“出会いの場”。美容グッズのような“提案型商品”とは親和性が高いと考えられるため、今後の出版各社の新展開も期待される。
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