企業の広報部門において、コーポレートサイトを初めとするウェブの活用は重点事項になっている。さらに急速に広がるツイッター、フェイスブックを初めとするソーシャルメディアの運用や管理も、広報部門の業務の一つとして挙がってきている。
雑誌「広報会議」2012年3月号で実施した企業210社に対する調査では、「広報部門にウェブ専任担当者を置いている」と答えた企業は38%と昨年とほぼ同様。さらに「広報部門にソーシャルメディア専任担当者を置いている」と答えた企業は10%という結果になった。
今回の調査結果から見る企業においてソーシャルメディア活用が進まない理由は、次の通り。
- 人員不足などで発信側の体制が整わない
- 運用担当者の情報リテラシー
- ソーシャルメディアポリシー、ガイドラインの策定が未着手
- 社内での教育の実施が未着手
- 経営層の理解不足
- 効果測定ができない
- (開始後)発信する情報が社内から集まらない→継続が難しくなる
- 炎上、情報漏洩などのリスクが怖い
中でも、ソーシャルメディアポリシー、ガイドラインの策定、および運用に関する社内教育について実施している企業は3割弱。すでに運用しているものの、まだガイドラインが完成しておらず社員が勝手に発信しっぱなし……という企業、逆にガイドラインが完成していないがために発信できない……と考えている企業など、「ソーシャルメディアに取り組みたい」という思いがあるにもかかわらず、上記のような理由で運用に踏み切れない、あるいは積極的に活用できていない企業が少なからずいることがわかった。
特に「発信する情報が社内から集まらない」という課題については、インナーコミュニケーションの課題も大きく絡んでくる。本誌で取材したコミュニケ―ション・デザイナーの佐藤尚之氏は、ソーシャルメディア時代こそインナーコミュニケーションが必要と話す。「社員一人ひとりが、自分の会社に対して強い思いや共感を持っていればいるほど、それは“自然”とソーシャルグラフに滲み出てくる。これは何億円もかけたブランドキャンペーンよりも効果が高い、“すごいキャンペーン”です」。従来、ソーシャルメディアを含む外に対するメディアリレーションとインナーコミュニケーションは別々に考えられてきた。しかし、ソーシャルメディアが浸透すればするほど、企業の戦略に置いて、社内外にどのように情報を循環させていくかを考えていくことは必至になるだろう。
ソーシャルメディアポリシーがありますか?
ガイドラインがありますか?
運用に関する社内教育を行っていますか?
また広報部の活動内容に関する調査では、メディアリレーション、社内広報、リスク管理に次いで、広聴活動が昨年の35%から55%へと伸長し、第4位に浮上。情報発信のみならず、自社のレピュテーションを確認する場としてもソーシャルメディアが活用されていることがわかった。運用にはまだ至らなくとも、各調査を通して広報部門におけるソーシャルメディア活用に対する意識の高さがうかがわれる結果となった。
調査の全貌は、雑誌「広報会議」2012年3月号の「企業210社に独自リサーチ 成長企業の広報戦略」をご覧ください。
企業210社に独自リサーチ 成長企業の広報戦略
本特集では、企業210社に独自リサーチ。活動の現状、そして課題をあぶり出した。各社各様の活動を俯瞰することで、あらためて自社の広報はどうあるべきか、新たな戦略策定に向けて考えるきっかけにしていただきたい。