佐藤可士和さんに質問「毎日必ずすることは何ですか?」

『ブレーン』では佐藤可士和さんが美大生からの質問に答える連載コーナー「美大生からトップクリエイターへの質問」を掲載しています。アドタイでは、隔週でこの連載を転載しています。
※本記事は、『ブレーン』2011年12月号(連載第5回目)掲載分です。


連載「佐藤可士和さんに質問」こちら

Q.一日のなかで必ずすることは何ですか?何に一番気をつけていますか?
(東京工科大学 デザイン学部 2年生 薄井知輝)
A.身体と精神の最適なバランスを保つ

身体を安定させれば頭がクリアになる

心身のコンディションをハイレベルな状態で安定させ、頭をクリアに保つ。特定の何かをするというより、生活全般の中で、常にそのことに気を配っています。

僕の毎日は、テレビ番組表のような分刻みのスケジュールです。その中で、大小さまざまな判断を次々に求められます。「今日はちょっと調子が悪い」なんて言い訳は許されません。過労や睡眠不足でフラフラの状態なんてもってのほか。常に頭をクリアな状態にしておかなければ、大きな誤りを引き起こしかねません。

こう考えるようになったきっかけは、サムライの設立でした。会社員時代と違い、独立して経営者としての責任が生まれたことで、コンディションを保ち、常に正しい判断を下すことの重要性に気づいたんです。

まず生活スタイルを朝型にしました。6時には起きて、夜は24時には就寝するように心がけています。できるだけ決まった時間に食事をとり、飲みすぎや食べすぎは避ける。ウォーキングとストレッチは毎日行い、ジムにも週に1、2度は通っています。
規則正しい睡眠も食事も、当たり前のようでいて、簡単なことではありません。かくいう僕も、20代のころはだいぶ無茶な生活を送っていました。大病こそはしなかったものの不調や風邪はしょっちゅう。その反省があるからこその今です。この仕事は生活が不規則になりがちだからこそ、リズムが崩れないよう、強く意識しています。

最近力を入れているのは体幹トレーニング。体幹を鍛えて身体の軸を安定させると、身体が非常に楽になるんです。驚くほど視界が開けて、呼吸が楽になり、体中に酸素が行きわたる感じがする。精神の軸も一本通るようで、思考がはっきりしますね。

自分でも驚くほど仕事の効率が上がった

そういう生活をしていると、自然と感情も安定してきます。焦りや怒りのような感情の乱れが、明らかに少なくなりました。目指しているのは、安定して頭が高速回転している状態です。

その結果、仕事量でいえば、大げさな話ではなく、10年前の10倍近くの量をこなせるようになっています。思い返して自分で感心することもあるくらい(笑)。もし今でも昔のスタイルを変えていなかったら…と考えると怖いですね。仕事に追われ、身体に無理を強いる毎日を過ごしていては、いろいろな意味で――肉体的にも、現役クリエイターとしていられる期間という意味でも――寿命が短くなってしまうと思います。

最近は、身体に関する新しい知識や視点を、積極的に取り入れるようにもなりました。いま読んでいるのは、免疫学や自律神経系について書かれた本です。西洋医学は、脳や心臓、皮膚などの部位を別個にとらえますが、その考え方では解決できない症状も多い。そこに免疫や神経系統という視点を導入し、身体全体を通して考えると、原因不明とされていた症状の解決策が見えてくることがある。そういった横軸の視点は、ブランディングによる問題解決の方法にも通じています。

自分の身体を知り最適化することは、良いクリエイションに直結すると断言できます。夜型の人はまず早起きをしてみては。百聞は一見にしかず。きっと何かが変わりますよ。

※編集部では佐藤可士和さんへの質問を随時募集しています。 brain@sendenkaigi.co.jp まで[質問、お名前、学校名、学部名、学年]を書いてお送りください。
最新号(2012年3月号)では、「広告などを見るときどんな点に注意して見ていますか?」への回答を掲載。こちらもあわせてご覧ください。


(プロフィール)
佐藤可士和
アートディレクター/クリエイティブディレクター。1965年生まれ。多摩美術大学卒業後、博報堂を経てサムライ設立。主な仕事にユニクロ、楽天グループのクリエイティブディレクションなど。

シリーズ【佐藤可士和さんに質問】

『佐藤可士和さん、仕事って楽しいですか?』
人気アートディレクターである著者が、学生との一問一答を通じて、やさしく、わかりやすく、ズバッと答えます。月刊「ブレーン」での好評連載にオリジナルコンテンツを加えて書籍化。

定価:¥ 1,050 発売日:2012/12/25

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