フェイスブックだけじゃ物足りない!広告会社、新卒採用のキーワードは「生社員」

「ソー活」のトレンド前に趣向凝らす

就職活動が本格化する今の季節、ユニークな広告会社の新卒採用プロジェクトが登場している。昨今のトレンドはソーシャルメディアを使った「ソー活」で、広告会社でも趣向を凝らしたフェイスブックページを開設する例がある。そんな中、一歩踏み込んだ展開をしているのが博報堂/博報堂DYメディアパートナーズとアサツー ディ・ケイの採用プロジェクトだ。

どちらもキーワードは「生社員」。博報堂では、今年の新卒採用のテーマを「PEOPLE EXPERT」とし、人の気持ちを動かす仕事の本質ややりがいを伝えていくことに重点を置いている。そこで、「ソー活」が本格化するトレンドを前提に、3つのコミュニケーションを展開した。まず、コミュニケーションの場は採用サイトからフェイスブックへと移行。毎日更新される比較的ライトなコンテンツを中心に、少しずつ魅力を伝え、長丁場の就活でエンゲージメントを高めることを意図した。次に、エントリーした学生には、内容を深く伝えるため、読み応えのあるパンフレットを送付。加えて、フェイスブックページ上では社員と直接対話できる自社セミナー“動く会社案内!生社員LIVE”を企画し、理解を深めた。

博報堂の新卒採用フェイスブックページ 動く会社案内!生社員LIVE

博報堂の新卒採用フェイスブックページ「PEOPLE EXPERT」。軽めの読み物コンテンツを中心に、「動く会社案内!生社員LIVE」などのライブコンテンツも。

さらに面接等で来社した学生のために開発したアプリが「オチツケール」だ。博報堂/博報堂DYメディアパートナーズを訪れた学生をGPSで探知、社員100人から手元のスマートフォンに“面接の緊張をほぐす応援メッセージ”が届く。「博報堂に興味を持ってくださった学生の皆さんへの感謝の気持ちと、頑張っていい結果を出してほしいという応援の気持ちを込めました。ここ一番の面接で、緊張して自分を出し損なってはもったいない。ちょっとホッとできたり、背中を押してあげられるものを作りたかった」と担当する博報堂 日野貴行氏は話す。受信メッセージはSNS上でシェアすることができ、面接に訪れた学生に留まらない広がりも計算している。

オチツケール オチツケール2

GPSアプリ「オチツケール」(落ち着ける+エール)。面接前に緊張した体験を思い出した、若手プランナー 宇佐美雅俊氏による発案だ。

究極のソーシャルメディアは「人」

アサツー ディ・ケイ(ADK)が実施したのは、サイトを通じて学生が社員を選び、OB訪問の予約ができる公式OB訪問キャンペーン。計91人の社員の顔がずらりと並んだサイトの中から、会いたい社員の写真をクリックし、プロフィールや動画を確認、予約に進む。東京本社および全国6都市の支社で実施した。

「SO℃IAL」 「SO℃IAL」mypage_reserveSeet

アサツー ディ・ケイの公式OB訪問サイト「SO℃IAL」。ツイッター経由でログインし、会いたい社員のOB訪問を予約する。1社員に対して最大4名がOB訪問できる。

「ソーシャルメディアは確かに情報収集・交換に便利ですが、ソーシャルメディアの領域だけで完結している感じが、どうにもしっくりこない。本当に実のあるコミュニケーションができていないのではないかと感じていました」と、担当するADKの石山寛樹氏は企画の背景を話す。会社のことをより深く知ってもらうには、実際に会ってもらうのが一番だ。それが「人の良さ」が特徴の同社の強みを最大限に活かせる方法だと考えた。「社員皆が汗をかく感じが、当社らしい(笑)。社員は究極のソーシャルメディアです」。

「SO℃IALカード」

社員から学生へ渡す「SO℃IALカード」。OB訪問後にカードに書かれた暗号をサイト入力すると、会った社員から学生にサプライズメッセージが届く。

新卒採用のツールは、このサイト1本に絞っている。昨年までは紙のパンフレットを作っていたが、今年はなくした。説明会の回数も半分ほどだ。そんな中でモチベーション高く、本気で同社に行きたいという学生だけを“厳選採用”するために、「会って話すのが、いちばんソーシャル。」をキーメッセージとし、ソーシャルコミュニケーションにも体温を求めた。キャンペーン名の「SO℃IAL」(「℃」=熱)にも、その意味を込めている。

OB訪問をした学生には社員へのコメントを直筆で書いてもらい、その内容をサイトにアップしている。学生の視点で捉えたADKの社員の姿を率直に書いてもらうことで、それ自体もサイトのコンテンツになる。このサイトは社員と学生で作る“生きた会社案内”でもあるのだ。

ADKのこの取り組みは、「ソー活」に対する「カウンターパンチ」のアプローチとして、ヤフーニュースをはじめとするWebニュース媒体にも続々露出。「今年一年で終わらせず、会社のブランデッドコンテンツとして継続させたい」と石山氏は意気込む。

ネット上で企業と学生が気軽にコミュニケーションを重ねることで採用に関するミスマッチを防ぐ「ソー活」も、PRまで一貫して設計することで、学生に留まらないPR効果を生み出すことができる。博報堂、ADK共に、エントリー数は前年を上回って推移している。いずれも社員がネット上で実名・顔出しで臨む“本気度”があってこそ。その気持ち、学生に確かに伝わったようだ。

スタッフリスト

博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 新卒採用プロジェクト
木村健太郎、日野貴行、大木秀晃、原野賢太郎、山下納帆美、金そよん、宇佐美雅俊、矢野真理子、露木卓也、堀田哲、湯ノ谷和彦、金丸紀之、高倉資征、湯川紘史、石川清以子、勝本彩耶可

アサツー ディ・ケイ「SO℃IAL プロジェクト」
企画制作:アサツー ディ・ケイ+Wab Design INC.
CD+PL+CW+AD+TD:
石山寛樹、竹内史明、細川万理、二口圭介、金子雄太、宮武俊介、武井哲史、梅田哲矢
Wab Design INC.
AD:中村和貴 D:米田秀、今北舞



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