『販促会議』の連載「知らないと損をする!販促コスト劇的改善策~同じ費用で10倍の効果を生み出す」。の最終回。今回は、これまでの総括とともに、コストの削減そのものが、プロモーションのあらたな価値創造につながるという点についてす本誌より一部抜粋して紹介する。
『販促会議2012年4月号』の連載「販促コスト劇的改善策」より
文:購買戦略研究所 代表取締役COO 古市 勝久
これまで、全5回にわたり「知らないと損する!販促コスト劇的改善法」ということで、主に小売業のチラシを題材に説明を行ってきました。 今回は最終回ということもあり、これまでの内容を踏まえ今後どのようにあるべきか説明します。
販促コストは、クオリティを追求することにより知らず知らずのうちに増加していきます。チラシの場合単純に枚数が増加しているのではなく、枚数を減らしているはずなのに大きくコストが変動しない、ということはないでしょうか。
購買コストというのは、毎年10%ずつ削減するよりも初年度に30%一気に削減する方がより簡単です。しかしながら、ダイエットにおけるリバウンドのように、急激に減らしたコストは知らず知らずのうちに膨らんできているものです。継続的にコスト管理を行わなければ気付いたときには元に戻っているということになりかねません。
しかも、この取り組みは自社だけで対応することが困難で、やはり取引先の協力が必要となります。取引先との適度な緊張感は必要ですが、過度な緊張感はお互いの関係性を悪化させます。ギブ&テイクにならい、ギブを得たのであれば、取引先にもテイクを与える必要があります。取引先側のメリット、それは販売量が増える、自社コストが改善されるなど多々あります。それらを強力にバックアップする交渉手法として、共同購買やサプライヤチームMDというような手法もあります。
また、初年度に単価の低減を行ったのであれば、翌年以降違う切り口によるコスト削減策を検討する必要があります。共同購買では販売量の増加を、サプライヤチームMDでは取引先の内部コストの改善による取引先の競争力の強化を実現していきます。これらを実行することにより自社のメリットのみにとどまらず、取引先にもメリットを「テイク」してもらい、お互いの関係性をより良好に保つことが可能となります。
さらに販売量のみならず、取引先における新商品の積極的導入も重要です。最近では、デジタルサイネージ、スマートフォンを活用したプロモーション、また、SNSを活用したマーケティングなどさまざまな手法が実施されています。これまでの取り組みを改善していくことはもちろんのこと、リスクなく新しいものを取り入れ他社との差異化を図っていくことも、販促担当者として重要な活動となります。
先にも述べましたが、何もしなければコストは毎年増加していきます。さまざまな視点で販促コストを見ることにより、管理すべきKPI(指標)も明確になっていきます。個別アイテムのスケジュール設定に始まり、あるべき取引体制の構築、各個別アイテムの単価、発行部数、発行エリア、売上効果などを定期的に管理し、発展させることが重要です。 購買活動は、企業が存続する限り発生する業務であり、かつ、根本は大きく変化するものではありません。当たり前のことを当たり前に実施していくことが重要なのです。
続きの、「購買コスト削減と経営に関する10カ条」については、発売中の『販促会議4月号』をご覧ください。
*定期購読者の特典として、この連載と連動した、「販促コスト削減に役立つ購買実態調査シート」がダウンロードできます。3月末までにお申し込み頂くと、さらなる特典があります。
【連載:販促コスト劇的最善策】
- 新取引をスムーズに進める方法
- チラシのコストを20%削減するには「単価」から
- 小売店、飲食、専門店必見!同じ費用で10倍の効果を生み出す、販促コスト劇的改善策②
- 小売店、飲食、専門店必見!同じ費用で10倍の効果を生み出す、販促コスト劇的改善策①
購買戦略研究所 代表取締役COO 古市 勝久
1996年 リーヴ・スポーツに入社し、マーケティングや業務改革プロジェクトに携わる。2000年に大手通信キャリアグループに入社。同年にMBAを取得し、B2B(企業間電子商取引)市場を研究。その後、「リバースオークション」のビジネスモデルを構築。2005年に早稲田大学IT戦略研究所と連携し、購買戦略研究所を設立し、代表取締役に就任
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