「企業コミュニティ」から学ぶ、MROCの運営
では現時点、日本企業ではどのようにMROCの活用に向けた取り組みが進んでいるのだろうか。
企業がファンとの関係強化を目的として立ち上げた「企業コミュニティ」も存在するがこうしたコミュニティでは、MROCでの調査と同様に、生活者の発言に耳を傾ける「リスニング」は有効に働くと言われている。
次にゆるやかな自社コミュニティからMROCのモデレーションのヒントを見つけたい。紹介するのは、ハーゲンダッツ ジャパンの「クラブ ハーゲンダッツ コミュニティ」だ。
ハーゲンダッツ ジャパン「クラブ ハーゲンダッツ コミュニティ」
ハーゲンダッツ ジャパンは昨年4月、ファンとの関係強化を目的に、「クラブ ハーゲンダッツ コミュニティ」を開設した。参加者が自分の好きなフレーバーや新商品に関する情報、ハーゲンダッツの楽しみ方などを情報交換できる、ハーゲンダッツ公認のオンラインコミュニティだ。mixiなどのSNS上にはファンがつくった自主的なコミュニティが存在していたが、会社として相互コミュニケーションが取れる場を提供しようと、同コミュニティを立ち上げた。
「コミュニティをスタートさせるまで、果たしてどのくらいの人が集まるのか、どんなテーマを設定すれば盛り上がるのか、まったくもって未知数でした」と話すのは、運営を担当するマーケティング本部の石鍋沙耶花氏。しかし、予想に反して年間目標の1万人が9カ月で集まるなど、順調なすべり出しを見せている。
MROCの現在の議論は、調査方法や得られる成果であると共に、参加者がコミュニティや対象ブランド、製品・サービスに対して、エンゲージメントを持ってもらえるかもポイントになっている。これは、立ち上げたコミュニティの状態を示す指標でもあり、コミュニティが円滑に機能する役割としても重要だ。もともとファンとの交流を目的に立ち上げている自社コミュニティは、その点、エンゲージメント強化に特化したコンテンツを提供している。MROCの活用を調査だけに終わらせないようにするためには、「クラブ ハーゲンダッツ コミュニティ」のような、アクティブユーザーの多いコミュニティを参考にする必要があるだろう。
※本記事は、5月15日発売の宣伝会議の特集「インサイト発見に強み!新リサーチ手法『MROC』」の内容を一部抜粋したものです。
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インサイト発見に強み!新リサーチ手法「MROC」(前編)