ユニクロの世界最大・最高水準のグローバル旗艦店として、今年3月にオープンした銀座店。ユニクロは2006年のニューヨークソーホー店を皮切りに、5年間で世界8都市に9つのグローバル旗艦店を出店。その中でも銀座店は、日本発のグローバルブランドとして世界に向けて「ユニクロの今」を発信する本拠地として重要な役割を担う。
銀座店オープンのニュースは、テレビだけで合計58番組にも上る番組で紹介され、その中で10分以上の企画が10番組以上で放映、20分以上の特別番組が5番組。驚異的なテレビ露出数を叩き出し、“世界のユニクロ”を世に知らしめた銀座店オープンの裏側には、同社PRチームの並々ならぬ努力があった。
狙うは“世界のユニクロ”文脈を軸としたテレビ露出
オープンにあたり、PRチームに課せられた最大のミッションは“世界のユニクロ”文脈を軸としたテレビ露出。ブランドの顔となる世界最大の旗艦店オープンニュースは、PRを含めて何が何でも成功させる必要があった。「戦略を練る中でも、集客・売り上げに結びつく露出効果として最も期待できるテレビに焦点を絞り、テレビでしっかりと“世界のユニクロ”のストーリーが露出されることを最大の目標としました」(ユニクロ グローバルコミュニケーション部 PRチーム)。
昨年12月、メディア向けに銀座店オープン情報をリリースした後、2月に記者懇談会を実施。1カ月後にオープンする銀座店について記者を集めて説明を行った。「懇談会ではあえて店舗を画で見せず言葉で説明することを意識しました。その場で全ては見せないが、しっかりと言葉で説明することで期待感を醸成しつつ各メディアがストーリーを考えてくれるきっかけになれば、と考えました」。
最大のターゲットであるテレビメディアに対しては、懇談会から銀座店オープンまでの約1カ月間に渡りテレビ局に足を運び、各番組に対し個別に情報の“刷り込み”を行った。「店舗オープンというトピックは、ほとんどのメディアが“画を押さえる”ために取材に来る、といったケースが多く、ストーリーなしで取材に来ることが多い。しかし今回の銀座店については、“世界のユニクロ”が“ユニクロの今”を全世界に発信する場所として世界最大のグローバル旗艦店をオープンした、と報道してほしいストーリーが明確にありました。実際にそのストーリーを報道してもらうためには、どんな要素が必要なのかを徹底的にヒアリングしました」。
メディアに対し、単純に一方的なアプローチを仕掛けるだけでなく、「確実に露出を獲得するために」何が必要なのか、何が今足りていないのかを個別にヒアリングする。そして露出のために必要とされる要素をひとつずつ揃えていくことで、メディア側は銀座店オープンというトピックにストーリーを描くきっかけとなり、ユニクロにとってはより理想に近い露出を一緒になって組み立てることができた。「オープンまでの1カ月間は、多い日で1日に4~5番組の方と会い、銀座店について話していました。それぞれ番組によって出したい要素や必要とされるものが異なるため、その時点で最高の露出を獲得するために全力で動きました」。
テレビ各局が「台本」持参で銀座店に集結
結果、オープン日にはテレビ全局が複数台のカメラを総動員。オープン前から店舗に密着する企画も複数入り、「予想を遥かに超えた」多くのメディアが銀座店に集結した。「店舗オープンでは非常に珍しいことに、ほとんどのテレビメディアが事前に台本を作って取材に来ました。それだけ尺の長い企画を用意してくれたと同時に、事前の刷り込みをもとに各メディアがそれぞれのストーリーを持って取材に来てくれたのです。こちらが出してほしい要素が網羅された、まさに狙い通りの露出を獲得することができました」。
メディアの洪水と化した銀座店オープン当日、“世界のユニクロ”を語る柳井正会長は歴史に残るメディア数で露出された。
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