「宣伝会議集客・販促メディアフォーラム2012」が8月28日、29日、東京国際フォーラムで開かれ、新カテゴリを切り拓いた商品の販促、ネットと連動して店舗へ集客した施策、チラシ活用、消費者の行動観察などをテーマに、多くのセミナーが行われました。その一部を9月から10月上旬にかけて、本欄で紹介します。
西友 マーケティング本部 シニア・ダイレクター 木村真琴氏
顧客が欲しいものを値下げリクエストする“サゲリク”
プロモーション展開するにあたり、まず西友の特長がEDLP(Everyday Low Price)だけでは変化がみえにくく話題になりにくいという問題意識がありました。低価格の認知度を底上げしつつ、「限定的」と思われている西友の安さの認知をさらにあげる。これが課題でした。
その一つが“サゲリク”です。これは、店側が決める値下げではなく、「欲しい商品を値下げしてほしい」というお客さんの声を反映する施策です。
ウェブ上で値下げしてほしい商品とその理由を投票し、100票集まると実際に値下げ検討がされます。結果としてはキャンペーン期間中に実際に値下げした商品の売り上げが大幅に伸びました。
この施策のコミュニケーションデザインは、テレビCMなどで話題喚起を行い、次にリクエストを聞いてくれたという消費者の納得が生じ、そして実際値下げされたことを“来店して”確認し・理解するという流れになっています。
特にPR獲得において貢献したのは、今回の施策がツイッターを有効に使ったプロモーションであったことです。実際には投票はツイッターではなくウェブサイトから行うのですが、その投票行動などがツイッターで拡散され話題となる仕組みでした。
しかし、これだけでは十分ではありません。ツイッターなどを使ってここまで行う人はお客さまのわずか数パーセントです。それ以外の大部分の人に向けたコミュニケーションデザインは店頭で行いました。具体的には、店頭で徹底的に「みんなの声で値下げ中」を掲げたのです。これにより、店に来て初めてサゲリクを知る人も出てきました。
消費者、メーカー、西友3つのwin
サゲリクを行った結果、リクエスト投票が100票に達したアイテムを「値下げ検討」と公示し、実際にガチでメーカーと値下げを検討していきました。
値下げを望むお客さまのツイートには、「愛用者の声」が付いた状態で拡散していきます。これはそのまま商品の宣伝にもつながるので、メーカー側にも広告効果としてのメリットが生じ、値下げにも応じてくださいました。
この第1弾の効果を受け、サゲリク第2弾を実施しました。第2弾では30票で値下げと参加ハードルを下げることで、リクエスト数の上昇につながりました。また、食品を対象とせず、薬や日用品を対象とすることで「西友は薬や日用品も安いんだ」という印象を与えることができたと思います。
結果として、薬や日用品の売り上げが前年同月比で大幅に伸びました。今回の施策は、ソーシャルメディアを使いつつ、消費者、メーカー、西友、それぞれにとっての「win」を生み出せたことが、結果を出せた要因と考えています。
→次回はNo.17 アテックスです。
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