ソーシャルメディアを巧みに使い、自分をメディア化 ――『情熱大陸』出演を掴んだ安藤美冬さんに聞く、“セルフブランディング術”とは

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自分の“マイルール”をたくさん持つ安藤さん。「ネイルは赤。所有する服は年間30着。メニューは3秒で決め、奇数月には海外にいく。飲み会は基本的に一次会まで。その他いろいろ。自由でいられる余白を残すために、その他のことを暗黙のルールにしてリズムをつくっています」。

“セルフブランディング”や“ノマドワーカー”という言葉がもてはやされるようになった昨今。言葉だけが先走りがちな傾向にある中で、その両方を体現する存在として現在多くの注目を世間から集めているのが、「職業名はフリーランスです」と公言する32歳の女性、安藤美冬さん。

安藤さんの公式プロフィールにはこうある――“ソーシャルメディアの発信とセルフブランディングを駆使し、一切営業活動をすることなく複数の仕事を手がける、独自のノマドワーク&ライフスタイル実践者”。

その独自の手法で織りなす存在感が注目を集め、今年4月にはTBS系列『情熱大陸』で紹介されたほか、朝日新聞やNHKなど多数のメディアから出演オファーされ各方面から引っ張りだこだ。一体どうやってSNSのみの発信でここまで辿り着いたのか、その裏側にはどんな戦略があるのか、安藤さんに話を聞いた。

ブログでキーパーソンを掴み、1日でフォロワー数が700人増加

「『情熱大陸』から出演オファーが来た時には飛び上がりました」と話す安藤さん。「もともと番組からのオファーも、プロデューサーの方からツイッター経由で来たんです」と語る。

「よく“どうやったら(出演を)獲得できるの?”と聞かれるのですが、私は本当にメディアへの売り込み活動を一切していないんですよ。ただ、SNS上で“自分をどう見せるか”という点はものすごく考えています。そのセルフブランディング感覚は誰にも負けない自信がある。自分をメディア化し、自分の中にあるコンテンツを面白く構築すれば、誰でも大きなチャンスを掴める、すごい時代だと思います」。

フリーランスとしてスタートを切ったのは2011年1月、今から約2年前のこと。メディアに登場する機会が急激に増えたきっかけとなったのが、フリージャーナリストの佐々木俊尚氏をモデレーターとした昨年12月のウェブメディアでのユーストリーム放送だ。

佐々木氏といえば、毎日新聞記者、『月刊アスキー』デスクを経てフリーで活躍するジャーナリスト。ツイッターのフォロワー数は16万5000人近く、各方面への人脈も豊富でメディアとのネットワークも広い。佐々木氏との出会いは安藤さんのブログに始まる。

「佐々木さんは、2009年にノマドに関する本を出されており、日々ツイッターでノマド的な働き方をする面白い人物を紹介していた。自分もいつか佐々木さんに紹介してもらえたらいいなと思っていました。ただ当時はブログのPV数も数百程度でしたし、実績もまだまだ。ところがとあるイベントをご一緒した方からの縁で、昨年8月に佐々木氏のツイッターで“フリーランスで営業しないで活動する女性”として紹介されたのです。するとツイッターのフォロワー数が急増。何と一日で700人も増えました。これは、自分のメディアが成長するまたとないチャンスだと直感したのです。そこで、佐々木さんのアンテナに引っかかりそうなブログのタイトルや書き方を入念に研究して戦略を立て、ターゲットを佐々木さん一人に絞り込んでブログを書き続けました」。

その結果、縁が巡り巡ってブレイクするきっかけとなったユーストリーム出演へとつながっていく。対談をきっかけにメディア露出が加速。

「ユーストリーム配信を観て下さった新聞記者やテレビ番組のプロデューサーの方から、今年初め頃から次々に問い合わせやオファーを頂くようになりました。自分では驚き以外に何もなかった。まさに、個人発信のソーシャルメディアがマスメディアに広がる様を目の当たりにしました」。

セルフブランディングの考え方はPRと同じ

「私は決して自分に特別な才能があるというわけではないと思っています。自分が特別だからこうなったのではなく、今は皆がそういうチャンスの中にある時代。ソーシャルメディアの普及によって、自分を取り巻く環境を自在に変えられるほどの力を持つようになったと思うのです」と話す安藤さん。独立する前は集英社で広告営業や書籍の宣伝に携わっていた。

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安藤さんのツイッターと公式ウェブサイト。ツイッターが自分に合っている、と話す。「自分の仕事、ひいては人生をつくっていく主戦場に選んだのがツイッター。ツイッター上で自分をどう見せるか、緻密に計算を重ねました」。現在のフォロワー数は約3万7000人、一年前の退社時の1600人から3万5000人強増えた。

ツイッターを始めたのは2010年1月。「年内に退職する」と決め実名で登録し、ツイッター上で発言力や影響力のある人、フォロワーが多い人に共通する特徴などについて研究を重ねた。「毎月200フォロワーの数を増やし、退社時には1600のフォロワーを集めると目標設定し、きっちりと達成して退社しました」と笑う。「毎月200のフォロワーを増やすために、一日に最適なつぶやきの回数はどれくらいか、その時間は何時頃か、どんなつぶやきがうけるのか、トライ&エラーを繰り返しながら綿密に計算を重ねました」。

セルフブランディングはまさにPRと同じ、と話す。「目標を定めた上で自分のテーマを決め、それに合ったターゲットやコンセプトを決める。ゴールイメージを決めた上でどんなPR戦略を打っていくか、まさにPR活動と同じです」。

また、安藤さんはこうも話す。「会社にとって発信力や影響力のある社員は財産であるはず。少し前まで会社やブランド“らしさ”を持つことが良しとされていましたが、今はそういう時代じゃない。一個人として自分自身がどんなブランドを作っていくか、という考えにシフトしていると思います。中でも会社やブランドの顔として外から一番近いところに立つ広報担当者は、これからの時代、特にそういった視点が求められるのではないでしょうか」。

現在発売中の『広報会議』12月号の特集「PRパーソンの魅力で、広報はここまで面白くなる」では、広報活動において、PRパーソンは自分の個性をどう生かし、自分の道を切り開くか。個性が光るPRパーソンのストーリーをもとに、自分の感性や個性の生かし方について掘り下げています。



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