コープさっぽろでの実証実験――価格訴求と価値訴求(2/4)

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実店舗での試みですが、我々学習院マネジメント・スクール「未来店舗の本質研究会」では、3年越しで14社の企業と産学協同プロジェクトを展開しており、直近では昨年11月に北海道のコープさっぽろ西宮の沢店で実証実験を行いました。

アサヒビール、江崎グリコ、ライオン、中央酪農会議の4社の参加を得て、ニーズが全く違うライフステージ別(妊娠時、子育て期、子離れしてから,シルバー)のクロスMDを展開。望んでいること、不安に思っていることが全然違うライフステージ別に商品を訴求しました。また、消費を拡大するというマクロ的なことに触れると、やはり「希望」を抱かせないといけない。

しかし、小売だけで「希望」を発生させることは難しい。小売のあり方として、彼らの能力で希望を発生させるのにどんなお手伝いができるか、一方、メーカーは商品を通してどんな希望を発生させるお手伝いができるか、実験は短期間でしたが、本来とても長期的なプローチが必要な取り組みなのです。

写真1

レイアウト図

売り場の一例(写真1)とレイアウト図がありますが、扱い商品をA、B、Cと売れる順にランク分けして展開しました。そこで実感したのは、特にB、Cの商品は広告では訴求しきれないということです。

それらを今回の実験スペースアピールしたところ、来店客から「今までそのような商品があったとは知らなかった」という反応が多数あったのです。これをきっかけに知ってもらい、売れて欠品が頻発しました。従ってB、Cランク商品においては、店頭で顧客が「いいこと教えてくれたな」と思ってもらえるような情報発信を行えるか、それが店舗活性化にはとても重要な要素になってくると思います。

同時にメーカーにとっても、BCの商品がA商品並みに売れる可能性が出てきますので、コラボレーションが効果的になってきます。

今回の実験でもう一つ大きな特徴として、4人の女性の「コンシェルジュ」をつけたことと、店舗スタッフの顔写真を貼って「オススメ」と書くことができる店頭ツールを用意したことです。我々のこれまでの研究成果のひとつに「ファンは人につく」というのがあるのですが、その効果がこの二つの試みには顕著に出ました。例えば顔写真付きで「小女子(こうなご)オススメ、カルシウムたっぷり」と載せるとやはり売れるのです。さらに店頭スタッフが登場して商品を紹介する映像を店内で流したところ、顧客がスタッフの顔を覚えてくれると同時に、スタッフのモチベーションも大いに上がるという効果がありました。
 
このような、マスと商品が置いてある場所のちょうど中間にあるような場所にて、商品の情報を消費者に向けて発信の場所を設けられると、まだまだ店頭というのは活性化していくと思います。その場合、小売単体だけではなく、メーカーなど他社と組んで得をする所はたくさんありますので、両者とも視野を広げてチャレンジして欲しいですね。また、場合によっては、両者をつなぐ第三者が介在してアンテナショップ的情報発信の場を展開するというのも一つの手段かもしれません。

取材を終えて

価値訴求というテーマで、上田教授からコープさっぽろの事例をお聞きして一番感じたことは、売れていない商品でも、「売れる可能性は無限」にあるということでした。ABC分析をした中で、売上的にはBランクやCランクのものでも、適宜適切に情報発信することができれば、Aの商品と同様に売ることができる。しかも、マス広告規模のマーケティング費用がかからずに。これは本当にすごいことだと思います。

今回のお話の中での重要なキーワードは、4つ。
(1)小売・メーカーによる「共創」・・・相互に知恵を出し合って売り方を考えていくこと
(2)マス媒体と売場の「中間地点」の重要性・・・中間地点での情報発信で広告→実売をつなげる
(3)定期的・定点的な「情報発信地」・・・そこに行けば新しい発見があるという、期待を抱かせる情報発信地づくり
(4)「顔が見える」ことによる信頼性・・・オススメする人の顔が見えることでの安心感が購買に向かわせる

デフレ経済、消費増税など、益々、価格競争が激化していますが、「価格訴求」の効果が薄れつつあるのも現実だと思います。これからの時代においては、適切な情報発信をしながら、消費者の潜在需要を掘り起こし、売れていない商品を売れる商品に変えることが重要です。企業が価格ではなく、“価値”競争をしていくためにも、店頭という現場でお客様を知り、売り方を開発していくことがさらに重要になっていきそうです。(株式会社マックス 澤地正人)

澤地正人(株式会社マックス 取締役)
澤地正人(株式会社マックス 取締役)
澤地正人(株式会社マックス 取締役)
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