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「宣伝会議」で毎年好評の、Webの領域で活躍するマーケター100人が登場する特集。今回のアドタイ・デイズでは、その中でもユニークな試みが光った3社の担当者が登壇した。Facebook課長、ソーシャル・マーケティング担当部長、カントリーインターネットマネージャー……。
ソーシャルメディアでのコミュニケーションを含め、企業のデジタルマーケティングを担うリーダーが一同に会し、それぞれ独自の組織体制で挑戦してきた生活者とのコミュニケーションについて、口コミ効果や売上への影響まで、業界を超えて語り尽くした。
<登壇者>
タマホーム わくわくドキドキ本部広告宣伝部 Facebook課 課長 川野和義氏
タワーレコード 営業戦略室 デジタルマーケティング担当部長 宮崎清志氏
フィリップス エレクトロニクス ジャパン エリアマーケティングオフィサー 兼 カントリーインターネットマネージャー 高橋淑恵氏
FBイベント機能を活用し、1450人の交流会を開催
──これまで反響が大きかったソーシャルメディアの施策は。
川野 「タマホームいいね!大交流会」というリアルイベントを、2011年11月から全国各地で開催しています。交流会では営業活動は行わず、参加してくれるファンの方々への精一杯の心からのおもてなしを通して、社員の「ホスピタリティ」も育成しています。昨年11月に東京・帝国ホテルで開催した時は、全国約200人の選抜メンバーに57人の支店長も含め1450人が参加しました。集客はフェイスブックのイベント機能を使っています。
宮崎 私の部署ではフェイスブックやツイッターのほか、2011年4月からK-POP(韓流)のアーティストらを招いたオリジナル番組をユーストリームで毎週配信しています。
輸入盤の扱いに強みを持つタワーレコードとしては、日本で急速にマーケットが拡大してきたK-POPのラインアップ充実のアピールにもなる。K-POP好きな担当スタッフが出演しているのですが、その熱意が視聴者に伝わり、番組中のコメントも大変盛り上がりました。番組はこの1年間で、年間20万人が視聴しています。
高橋 当社では本社(オランダ)と米フェイスブック社とが実験的な取り組みをしています。電動歯ブラシ「ソニッケアー」のフェイスブックページがそれで、複数の国で開設されているページを束ねて表示でき、フェイスブックに登録している国籍情報などに応じて適した国のページが表示されます。ファン数は全世界累計の数字となっていますね。
──組織や、コンテンツの更新体制について教えてください。
宮崎 全店舗、各音楽ジャンル、本社各事業部それぞれでツイッター公式アカウントを開設・運営していて、合計108あります。このほか、フェイスブック、ユーストリーム、LINE@なども運営しています。
高橋 「管理」と「実行」の2部門に大きく運営体制を分けています。管理部門はキャンペーン実行者を筆頭に広報・法務・リスク管理の部門なども連携してチームを組みますが、実行部門は基本的に社外のパートナー企業に依頼しています。実際にコミュニケーションのフロントに立つコミュニティマネージャーのほか、コンテンツ制作担当者や分析担当者がいます。
川野 タマホームでは広告宣伝部門などを内包する「わくわくドキドキ本部」の中にFacebook課があります。ここでフェイスブックに載せる記事のテーマを設定し、全国の57支店、219店舗に対してランダムで原稿を依頼しています。
運営ポリシーを策定、社員に責任ある投稿を促す
── SNS 運用で“ヒヤリとした”経験はありますか。
高橋 改めて個人情報が特定されるような書き込みは注意が必要だと感じたケースが過去にありました。社員が商談先で倒れた人にたまたま出くわし、AEDで心肺蘇生を施したことがあったんです。
それを知った人事部がとてもいい話だということで、フェイスブックに投稿したのですが、場所や内容が具体的すぎるあまり、倒れた方が特定されてしまう可能性がありました。これはまずいと思い、投稿直後に修正指示を出したことがあります。
宮崎 音楽業界では新譜のリリースなどの情報解禁日時を守ることが、強く求められます。スタッフには情報解禁前のフライングツイートは行わないよう周知徹底させています。
「購入のきっかけ」としてFBの割合が増えてきた
──ソーシャルメディアによる口コミ効果や売上への影響などはいかがでしょうか。
川野 フェイスブックページから毎月数十件の資料請求依頼をいただいています。昨年12月と今年1月には各1棟の住宅を受注していますので、営業実績にも確実に結びついていると考えています。
資料請求以外にもファンを店舗に誘導できており、「新入社員の初受注のお客さまがタマホームのフェイスブックページのファンだった」という嬉しい報告も入ってくるなど、少しずつですが結果に表れてきました。
高橋 ファン数がまだ少ないので、今はファンとのエンゲージメント深化に重点を置いています。運営していて気付いたのは、シェアが広がりやすい投稿と広がりにくい投稿の見極めが大事ということ。
たとえばアイドルグループを起用したメンズグルーミング製品のキャンペーンでは、インプレッション数はかなり伸びたものの、「いいね!」数は思ったほど増えませんでした。
それはアイドルに関する情報をシェアするのは恥ずかしいという気持ちがあるから。これを機にシェアしたくなるような、クールなクリエイティブに変更しています。
また、製品を買った人に「購入のきっかけとなったメディア」についてリサーチしてみると、フェイスブックを挙げる人が確実に増えています。
全体に占める割合としてはまだまだ少ないのですが、効果を感じています。
宮崎 ソーシャルメディアからどれだけECサイトへ集客でき、受注に至っているか測定し、各担当者へレポーティングしています。集客・売上ともに右肩上がりで、ソーシャルメディア活用の効果は数字として顕著に現れています。音楽が本当に好きな現場スタッフが投稿するからこそ、ユーザーが共鳴してシェアが広がり、ブランドをつくり上げているというのが実感です。
川野 社員全員の意識を高めるのも重要ですね。タマホームでは最近、社用携帯をiPhoneに変えました。フェイスブックには社内グループもあり、年齢や立場を問わずスマートフォンで
ソーシャルメディアを活用する流れをつくっていきます。
高橋 今は面白い写真など、思わず人に伝えたくなるような投稿は「いいね!」が非常にたくさん付きます。でもこれは今だけのトレンドだと考えています。ユーザーの好みはどんどん変わっていくので、ソーシャルメディアのトレンドをしっかり把握することも重要だと思います。
【アドタイ・デイズ】バックナンバー
- (4)「流通とメーカーの新しい関係~共創の時代へ~」
- (3)「これからの“メディア”の捉え方」
- (2)「逆境の中で、経営トップ、社員、広報はどう動いたか」
- (1)「企業と消費者が直接つながる時代 コミュニケーションの理想像を追う」