「なぜオムライスにはグリーンピースが乗っているのか」。

林龍太郎(編集者・インタラクティブプランナー)

新手の新書みたいなタイトルですが、これは私がかつて編集・ライター養成講座で教わった中で、もっとも印象深かった言葉です。これには「編集者やライターは、日ごろから様々なことに疑問を持つクセを持たなくてはならない、そこから新しい着想を得て、企画を膨らませていくのが仕事である」という意味が込められています。

正直、オムライスにグリーンピースは似合わない……と個人的には思います。特に味に寄与するわけでもなく、彩を添えるとも思えない。むしろ子どもたちには嫌われている部類の野菜のはず。そもそもオムライスを最初につくった人は誰なんだろう?

オムライスのルーツをたどってみると、実は明治時代に生まれた日本オリジナルのメニューであり、銀座の「煉瓦亭」という洋食店に行きつく。ハヤシライスやカツレツ(後のトンカツ)などもここから生まれたらしい。さらにすぐ近くの「銀座スイス」という店では、かつて巨人選手だった千葉茂氏の「カツレツとカレーを一緒にしてくれ」というわがままオーダーから、「カツカレー」が生まれたそうです。もっと調べて、銀座は日本の洋食メニュー生誕の地みたいな記事はできないかな……という感じでどんどん膨らませていくのが、雑誌編集者やライターの仕事(の一歩目)です。

ただ、ネット系メディアではこうした作り方や記事は回りくどく見えるようです。ネットのあちこちで起こっている面白いことをいち早く取り上げたり、思わず二度見してしまう画像つきの記事だったり。確かにそちらの方が読者ウケはよいし、シェアされやすい。メディア特性の差、といえばそれまでですが、しかし「オモシロイことを右から左へ受け流す」だけだと、ただのブログ記事と変わらなくなってしまいます。

ある事象から着想を得て、企画を膨らませていくマインドは、どのメディア編集者でも必要な能力ですし、長い年月を経たとき、必ず大きな糧になるでしょう。これから編集者やライターを目指す方は、ぜひ“グリーンピース”の話を頭の片隅に置いてもらい、何かネタを考えるときの参考にしてもらえれば幸いです。

林龍太郎(はやしりゅうたろう)
編集者・インタラクティブプランナー。成城大学卒。日立製作所に入社し、鉄道や新幹線の営業を担当。編集・ライター養成講座を受講し、卒後はマスコミ業界専門誌から編集キャリアをスタート。太田出版『QUICK JAPAN』編集部、フリー編集者を経て、08年博報堂入社。エンゲージメントクリエイティブ局所属。東京インタラクティブ・アド・アワード金賞、アドフェスト金賞、スパイクス アジア銀賞、広告電通賞最優秀賞、中国国際広告祭銀賞など。現在ネットニュースの立ち上げ準備中。

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