メディアコンテンツから始まるO2O2Oの可能性

ちょっと趣向を変えて−Click AD−
O2Oに関しての整理を独自の見解を含め、考察させていただいていますが、汐留内には他にも多くのメンバーがO2O領域に関わり、サービス開発やコンサルティングなどのお仕事をさせて頂いています。

そのメンバーの中の1人である上原君が、O2Oについての見解をまとめてくれていたので、O2Oについての多面的な考え方があることの一例ということも含め、今回は、そちらを紹介させてもらおうかと思います。

上原君は、Click AD(クリックアド)という音声認識モジュールの開発担当をしていて、音を起点としたO2Oの設計には造詣が深いので、僕自身も話していて参考になることが多くあります。

※ Click AD http://www.clickad.jp


電通プラットフォーム・ビジネス局の上原 拓真と申します。吉羽さんはO2Oには ①Online to Offline と ②Offline to Online のふたつがあると解説されてます。一般的には①のほうが普及しているO2Oですが、私は②のO2Oを研究しています。私は別名で①を“Mobile to Action”。②を“Media to Mobile”と呼んでいます。

O2O

あらゆるコンタクトポイントとスマートフォンをつなげる

“Offline to Online=Media to Mobile”のなかでも、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などのメディアコンテンツとスマートフォンをつなげるための認識技術や、つながった後にスマートフォンで展開できる表現や販促技術の開発をしています。テレビを例に考えてみると、番組やCMで流れる音声をスマホでキャッチ(認識)させることで、そのコンテンツと連動したゲーム(表現)を楽しませたり、割引クーポン(販促)をプレゼントするという流れです。

現在、テレビとスマホを同期させるために使っている代表的な技術は音声認識が多いですが、新聞や雑誌なら画像認識、電子看板やOOHならQRコードやNFC、というように、メディアによって最適な技術には相性があります。

“Media to Mobile”は海外では「Shazam」「IntoNow」「GetGlue」などたくさんサービスが存在していましたが、この数年で日本の事例も爆発的に増えて、欧米欧州に匹敵するリッチな体験がつくられています。

特にテレビ系のダブルスクリーン施策は急増しています。日本放送協会「NHK紅白」、日本テレビ「JoinTV」「WizTV」、テレビ朝日「テレ朝リンク」などアプリやブラウザを使った仕掛けが昨年から今年にかけて目立っています。

紅白歌合戦もO2O?

たとえば日本放送協会「NHK紅白」というスマホアプリを例にあげてみましょう。2012年12月31日の紅白歌合戦では、様々な“Media to Mobile”が試みられています。

ひとつは投票です。視聴者審査員として紅組と白組どちらを応援するか、アプリ経由でリアルタイムに投票することができます。ふたつは音声認識を使った番組連動企画「花を咲かせよう」です。「花は咲く」という歌を合唱するシーンにて、スマホアプリをかざして音声をキャッチするとアプリ画面の地図のうえに色とりどりの花が咲く企画が行われました。
みっつはソーシャルビューイングです。紅白に関してつぶやかれているTwitterツイートを集計し、リアルタイムでどのくらいツイート数があるのかカウントしたり、急に盛りあがってきた急上昇ワードを表示します。よっつは出演者通知です。お目当ての歌手が登場するのを見逃さないよう出場の数分前にはアプリでプッシュ通知が届きます。

O2O1

ビデオリサーチによると、紅白歌合戦で行われた様々なデジタルコンテンツ施策は、視聴に良い影響を与えていると発表しています。紅白のデジタルコンテンツを使った利用者と、使わなかった非利用者に対して調査分析してみると、番組理解度、紅白視聴割合、視聴後の満足度など利用者のほうが上回っていました。
特に男女ともに10代の視聴者に大きな影響を与えていることも確認されています。

※参考:ビデオリサーチ:「紅白歌合戦」のテレビ視聴とデジタルコンテンツ利用の関係を新しい『マルチスクリーン効果測定手法』で分析 2013年3月

Media to Mobile to Action の可能性

テレビ×スマートフォンは、番組を楽しむだけでなく、その後の行動も促すトリガーになります。たとえば料理番組を見ている時に、スマホを立ちあげて番組で紹介された料理店の情報をクリップしてお店に行く、という動線はいまではあまり珍しくありません。しかしこの導線に加えて、番組にアプリをかざすだけでクーポンをもらえるとしたら。自分でいちいち手入力してお店のことを検索しなくても楽にクーポンゲットできるとしたら。視聴者はもっと番組にのめりこんでくれるかもしれません。

メディア接触者をそのままリアルな行動に移す。メディア → スマホ → リアルという動線すべてを一気通貫できるとしたら、これは“O2O2O(Offline to Online to Offline=Media to Mobile to Action)”と呼べるコンセプトになりえると思います。

“Mobile to Action”はユーザーにとって自然な行為です。グルメサイトで人気のお店を探し、来店してサイトでもらったクーポンを使うのは日常です。比べると“Media to Mobile”はまだまだ自然な動線ではありません。テレビは画面に集中して見ている人はほとんどですし、新聞を読みながらスマホを立ちあげるのは一般的ではありません。

しかしマルチスクリーンでメディアに接触することに慣れた若い人たちは年々増加しています。
対して複数メディアをペアリングして体験することに特化したコンテンツはまだまだ少ないと思います。

現在は私含めて、各社とも実験段階なのかもしれませんが、ユーザーに対しては個々のサービスをバラバラに体験するより、ひとつのアプリやブラウザを立ちあげれば、いろんなコンテンツにペアリングできて、いつでもどこでもクーポンがもらえたりゲームができる、となれば、かなり大きなマーケットの可能性があります。

とはいえまだまだ発展途上なふたつの“O2O”。「楽しい!」「超便利!」「この手は思いつかなかった!」とうならせるクリエイティブをいかに編みだせるか。ビッグアイデアひとつでユーザーの習慣はこれから大きく変わっていく気がします。


【吉羽 一高「汐留で使われているO2Oの教科書」バックナンバー】

吉羽 一高(電通デジタル・ビジネス局 アート・ディレクター)
吉羽 一高(電通デジタル・ビジネス局 アート・ディレクター)

電通デジタル・ビジネス局メディア企画部、アート・ディレクター。
SEMやYou Tubeのメディア価値測定など新しい価値尺度の算出やテレビと組み合わせたリッチメディア広告の立ち上げなどを経て、現在は、Google、Facebook、Twitterなどのプラットフォームを活用したコミュニケーション設計・プロダクト開発、iPhone/Android向けのアプリケーション制作担当。また、テレビ・新聞・雑誌などのメディアとインターネットのクロスメディア戦略やサービス開発なども手がける。

吉羽 一高(電通デジタル・ビジネス局 アート・ディレクター)

電通デジタル・ビジネス局メディア企画部、アート・ディレクター。
SEMやYou Tubeのメディア価値測定など新しい価値尺度の算出やテレビと組み合わせたリッチメディア広告の立ち上げなどを経て、現在は、Google、Facebook、Twitterなどのプラットフォームを活用したコミュニケーション設計・プロダクト開発、iPhone/Android向けのアプリケーション制作担当。また、テレビ・新聞・雑誌などのメディアとインターネットのクロスメディア戦略やサービス開発なども手がける。

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