ブレイクスルーを生み出す方法④情報感度の高め方、発想で遊ぶ習慣の作り方

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木村健太郎(博報堂ケトル)、磯部光毅(磯部光毅事務所)という2人のクリエイター/アカウントプランナーによる本書は、「何かを解決する時に、自分たちはどうやってブレイクスルーしているのか」、そんな疑問から生まれました。これまで広告の仕事で培った知見と経験をベースに、ビジネスや日常生活のたとえ話や事例を盛り込みながら、「ひらめきの原理」となる思考ロジックを独自に分析し、見える化。この本を読み終えたとき、誰もが「ブレイクスルーの思考法」を手に入れることができます。

本連載は、4月2日に発売した書籍『ブレイクスルー ひらめきはロジックから生まれる』の出版にあわせて掲載します。


「③ アンパンマンの志と、ブレイクスルー。」はこちら
「② コロンブスの上司」はこちら
「① 「正しい答え」にこだわって、臆病になっていないか。」はこちら


木村健太郎(博報堂ケトル クリエイティブディレクター/アカウントプランナー)×
磯部光毅(磯部光毅事務所 アカウントプランナー/コピーライター)

拙著「ブレイクスルー」が発売されて1カ月半がたちました。
うれしいことに、予想を上回る多くの人に読んでいただいているとのこと。感謝感激。ありがたいことでございます。そこで最終回は、この本に書いた「ものをひらめく原理」を、もっと普段の仕事や生活に生かすための秘訣を書いてみたいと思います。

「時代や社会の空気をつかんだりアイデアの種を見つけるために、ご自身は日ごろどんな情報ソースから、どのように情報収集しているのですか?」

講演や講義をすると、参加された方からこんな質問を受けることがよくあります。特に学生さんからの質問ではこれが一番多いような気がします。

でも、正直な話、僕らは何も特殊な情報収集はしていません。
もちろん、世の中で流行っていることはなるべく試したりするようにしています。でも、普通の生活者と同じようなメディアに接し、同じような情報行動をしています。むしろメディアやネットに接触している時間は忙しくて少ない方だと思います。
何か特別な情報源を持ってるわけでもありません。これは、僕らだけでなく、いわゆる情報感度の高いといわれるクリエイティブやプランニングの仕事をしている人はだいたいそうだと思います。

では、何が違うのか。
それは、情報に触れた時の「思考フィルター」なのです。
同じ情報に触れたとしても、その情報をどうとらえたかで情報感度に大きな差が出るのです。

「思考フィルター」とは具体的には何か。

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たとえば、朝の通勤電車の中で、「反対側の座席に座ってる人が、全員スマートフォンを見ていた」とします。

とりたてて珍しくない光景です。
でも、このビジュアル情報から何を思うでしょうか。
「最近は携帯よりスマホの時代なんだなあ」とか
「みんな一体何やってるのかなあ」などとまずは思いますよね。
ここまでは、一般的な思考フィルターです。

でも、この光景を「何か似ているものはないかだろうか」
という思考フィルターを通して見たら、どうなるでしょう。
「電車の中は、まるでゲーセンみたいだなあ」とか
「いや、電車の中はコンテンツに集中できる図書館なのだ」とか、はたまた「スマホの持ち方はお経に似てるぞ。若いお坊さんの朝の読経の時間みたいだ」などと思えるかもしれません。
これは「類比」という思考フィルターです。

次に、
「この事実が意味することは何か?」
という思考フィルターをかけてみるとします。
「日本人は、他人と視線が合うのを嫌う国民性なんだな」とか
「ビジュアルと音を外界から遮断すればどこでも自分の空間になるんだな」とか
「遠距離通勤の人の方がスマホの接触時間が長いのでは?」
などという洞察が生まれるでしょう。
これは「仮説」という思考フィルターです。

今度は、この光景に
「もしも◯◯だったら」
という思考フィルターをかけてみます。
「もしもスクリーンに自分が写っていて、みんな自分の顔にうっとりしてたら面白いな」とか
「もしもスマホで、電車のスピードが変化したら俺もやってみたいな」とか
「もしも今この全員にメッセージを送れたら何を言おうか」
そんな妄想が広がります。
これは「仮想」という思考フィルターです。

このように、通勤途中の「乗客が全員スマホを見ている」というひとつの情報からも、思考フィルター次第で様々な発想が生まれるのです。
特別な情報源などなくても、優れた思考フィルターを持つことで、多くの気付きやヒントを得ることができるのです。

この3つの思考フィルターは、拙著「ブレイクスルー」に書いた6つの「森の思考法」のうちの、類比(同じように)、仮説(それが意味することは何か)、仮想(もしも)、にあたります。
残りの3つの思考法(連想、組み合わせ、逆転)も、ものを見る思考フィルターに活かすことができます。

これら6つの技術は、ロジカルシンキング(街の思考)ではたどりつかない、創造的な解決方法、つまりブレイクスルーを生み出す手法です。
古今東西の膨大な論理学や発想法を研究した上で僕らが独自に単純化した自信作です。
偉大な科学の発明も、ヒット商品や広告のアイデアも、その発想のジャンプの筋道はこの6つの思考で説明がつくのです。

ブレイクスルーとはいつ起こるのか。
アイデアが思いつく瞬間というものは、そのことに集中している時よりも、そのことから離れて何か別のことをしている時にやってくる。
ジェイムスヤング氏の名著「アイデアの作り方」にはそう書いています。
つまり、考えるテーマをセットしておくと、一見関係のない刺激がインプットされたときに、思考フィルターが作動してバチンと化学反応が起きる。
それは電車の中だったり、風呂の中だったり、散歩中だったり。
ブレイクスルーの瞬間とは、そんなイメージです。

例えば、化粧品の新しいサービスという課題をセットして電車に乗っていたら、「スマホを手鏡のように使った通勤スキンチェック」という発想がアイデアになるかもしれないし、旅行商品の課題をセットしていたら、「外界との遮断」というコンセプトが生まれるかもしれません。

日常生活における習慣的な思考フィルターがブレイクスルーを生むのです。

さらに、最後にもうひとつ加えると、
情報とは外部から入ってくるものとは限りません。
「思いだす」という行為も、ある意味情報のインプットなのです。
記憶とは、自分の頭の中にある巨大な情報ソースだからです。
何かのきっかけで何かを思い出した時、その情報にどんな思考フィルターをかけるか。
これだけで、全然発想力違って来ます。

思考フィルターを持つことで得られるもの。
日常生活でひらめき続ける習慣。
森の思考で遊ぶ快感。
何事にもワクワクできる力。

何らかのきっかけでこの本を手にとっていただいた方には、単なる発想のテクニックを超えて、このような豊かな「ブレイクスルーのよろこび」を手にしていただけたらと願っています。(木村健太郎)

PS. 5月31日金曜日19時から渋谷ヒカリエで、磯部くんとふたりで「ブレイクスルー」のトークショーをやります。クイズや事例を使って楽しくやります。無料ですので是非遊びに来てください。

木村健太郎さん、磯部光毅さんトークイベント 詳細

「ブレイクスルー ひらめきはロジックから生まれる」トークイベント
1時間で理解できる“ブレイクスルー”のロジック
木村健太郎(博報堂ケトル)、磯部光毅(磯部光毅事務所)
会期:2013年5月31日
時間:19:00 – 20:30
場所:COURT
料金:無料
定員:100名
事前申込 不要


木村健太郎(きむら・けんたろう)

博報堂ケトル 代表取締役共同CEO/エグゼクティブ クリエイティブディレクター/アカウントプランナー
1969年生まれ。一橋大学商学部卒業後、1992年博報堂入社。戦略からクリエイティブ、PR、デジタルを越境した統合的なプランニングスタイルを確立し、2006年博報堂ケトルを設立。従来の広告手法にとらわれない「手口ニュートラル」というコンセプトで、アイデアを沸かして世の中を沸騰させるコミュニケーションを提案・実施している。

磯部光毅(いそべ・こおき)

磯部光毅事務所 アカウントプランナー/コピーライター
1972年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、1997年博報堂入社。ストラテジックプランニング局を経て、制作局(コピーライター)へ転属。2007年4月独立、磯部光毅事務所設立。戦略畑、クリエイティブ畑両方での経験を活かし、単なる広告開発に限らず、経営戦略、商品開発、コミュニケーション開発、情報戦略立案から、コピーワークまで、全バリューチェーンを横断的にプランニングすることを得意とする。


【「ブレイクスルーを生み出す方法」バックナンバー】

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著者の2名が講師で登壇「企画発想力養成講座」

『ブレイクスルー ひらめきはロジックから生まれる』の著者である木村健太郎氏(博報堂ケトル)、磯部光毅氏(磯部光毅事務所)が、ビジネスに使える企画発想力を具体的な実践トレーニング、ワークショップで徹底的に指導します。
開催日:2014年07月05日(土)、2014年07月19日(土)全2回

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