日本企業のマーケティング部門はプロモーションしか見ていない
大変楽しみにしていたイベントが6月17日に行われたので、今回はそれを紹介したい。それはコトラー・カンファレンス 2013(主催:日本マーケティング協会、日本マーケティング学会、ネスレ日本)で、東京ビッグサイトの国際会議場に約1000人を集めて行われたものであった。フィリップ・コトラー教授と言えばマーケティングの教科書的な著書の筆者であり大御所で、当カンファレンスは早々に定員に達して締め切られ、当日の会場も大盛況であった。教授は大変な親日家であるが10年振りの来日ということで、御年80歳を超えて益々お元気で、80分にわたるプレゼンテーションとその後のパネルディスカッションを精力的にこなしていらっしゃった。
では本題に移ろう。コトラー氏は70年代80年代に日本は世界一のマーケターとして輝いていたが、それは良い製品を安く提供できていたというのが主な理由であったとしている。その中でも氏はエレクトロニクス、カメラ、自動車、バイク、時計、船、ピアノ、ジッパー、ラジオ、テレビ、ビデオ、計算機などを日本の強さとして挙げていた。しかしご存知のように現在の日本はそのような状況とは異なっているのであるが、その要因は以下にあるとしている。
- 国内市場への依存度が高い
- One P (Promotion) 依存でCMOが不在
- 商品開発にマーケティング視点が入っていない
- 経営上の判断が遅い
- 終身雇用制度と年功序列制度
- 株式市場を意識した短期経営目線
筆者が特に注目したいのは2番目のポイントである。皆さんもご存じだろうが、4Pとはアメリカのマーケティング学者であるエドモンド・ジェローム・マッカーシーが1960年に提唱した有名な分類Product(製品)、Price(価格)、Promotion(販売促進)、Place(流通)のマーケティングミックスことである。確かに現在日本でマーケティングを語るときにはPromotionの話が多く、製品のスペックや価格体系、流通経路などにマーケティング部門がかかわることは少ないのではないだろうか?
米国ではマーケティングの4PにCMOが入り込んで全社の戦略に貢献しているということである。今までのように良い製品を安く作るだけでは勝てない中で、コトラー教授は日本企業に経営の担い手の一人としてCMOの役割を創るように提唱しているのである。
この状況を打開して成長のためのレシピとしてコトラー教授は以下を挙げている。
- 製品、ビジネスモデル、流通、コミュニケーション、価格のイノベーション
- アイデアの共創およびクラウドソーシング
- マスからソーシャルメディアへのシフト
- 戦略的マーケティングの担い手としてCMOを登用せよ
- 製品ではなくて顧客のことを考えよ
- ブランドの存在意義を明確化せよ