講演者:後藤洋氏(トライベック・ストラテジー 取締役COO)
近年、企業のコミュニケーション活動において、オウンドメディアの重要性が高まっている。それは生活者にとっても同様で、経済産業省実施の生活者購買動向調査によると、商品の選択・購入・サポートといったすべての段階で、約半数の生活者が企業の公式サイトを判断材料にしている。
トライベック・ストラテジーの後藤洋氏は、「数あるコンタクトポイントの中でも、オウンドメディアは1つのハブとなる重要なメディアだ」と話す。それにもかかわらず、日本企業は、オウンドメディアのトップページにテキスト情報をふんだんに盛り込みがちだ。
一方、グローバル企業は、あえて情報量を絞り、最小限の情報で商品のこだわりや使用シーンが自然と「伝わる」トップページとなっている。後藤氏は「典型的な日本企業のトップページは、ユーザーに対して情報過多な印象を与えるばかりか、視点が定まらず次の行動の妨げになる場合もある。ユーザーは一度に多くの情報を受容できないことを知るべきだ」と指摘した。
後藤氏はこうした背景を踏まえ、「日本企業のオウンドメディアは、情報を並べて一方的に『伝える』カタログから、企業の想いが自然と『伝わる』メディアへと変革すべきだ」と言う。そのために必要な概念は「4つのM」だ。「Meet First(最初の印象で記憶に残す)、Mega Navi(どこからでもすぐに目的の情報にたどりつける)、Movie(動画によってよりリッチに、リアルに伝える)、Multi Device(どんな端末・場所でもアクセスできる)」。多くのグローバル企業では、この4項目が実践されている。
テキスト中心のカタログサイトを脱し、今後5年間形骸化しないオウンドメディアへと進化するためには、「ユーザーのココロが躍るUXデザイン」と「共創マーケティング」が欠かせない。その際、ユーザーとの最初の接点から購入、使用シーンまでをストーリー化する「カスタマージャーニー」を意識する必要がある。後藤氏は、その2つの手法を実践するグローバル企業の例を挙げた。
前者の手法として、GEやIBMが実践する「ストーリーテリング」、コカ・コーラのデジタルマガジン「コカ・コーラジャーニー」における「キュレーション」、メルセデス・ベンツによる「エモーショナルアプローチ」、デルタ航空の「ジャーニーオリエンテッド」と、4つの手法を紹介した。
一方、後者の手法としては、ボルビックの「1ℓfor 10ℓ」における「コーズマーケティング」、アメリカン・エキスプレスの「ユーザーレビュー」、ペプシコの「オウンドソーシャル」、アメリカでレクサスが実施した「シネプリント」の4つを紹介した。
「オウンドメディアを強化するための方法に答えはないが、改めて原点に立ち戻り、将来を見据えたあるべき姿に導くためのフレームワークはある」(後藤氏)と締めくくった。