オウンドメディアは「伝える」から「伝わる」へ

宣伝会議は6月5日、都内で「宣伝会議インターネットフォーラム2013」を開催しました。WEB・デジタルテクノロジーの発展と、それに伴って大きく変わりつつあるメディア環境や消費者行動を捉え、企業コミュニケーションの未来と、そこでのデジタルの活用可能性を探る同イベント。「生活者とともにつくる企業・商品のストーリー~デジタルが近づける企業と生活者~」をテーマに、企業のデジタルマーケティングの最先端を捉える約40の講演が行われました。こちらでは、その全講演のレポートをご紹介します。


講演者:後藤洋氏(トライベック・ストラテジー 取締役COO)

近年、企業のコミュニケーション活動において、オウンドメディアの重要性が高まっている。それは生活者にとっても同様で、経済産業省実施の生活者購買動向調査によると、商品の選択・購入・サポートといったすべての段階で、約半数の生活者が企業の公式サイトを判断材料にしている。

トライベック・ストラテジーの後藤洋氏は、「数あるコンタクトポイントの中でも、オウンドメディアは1つのハブとなる重要なメディアだ」と話す。それにもかかわらず、日本企業は、オウンドメディアのトップページにテキスト情報をふんだんに盛り込みがちだ。

一方、グローバル企業は、あえて情報量を絞り、最小限の情報で商品のこだわりや使用シーンが自然と「伝わる」トップページとなっている。後藤氏は「典型的な日本企業のトップページは、ユーザーに対して情報過多な印象を与えるばかりか、視点が定まらず次の行動の妨げになる場合もある。ユーザーは一度に多くの情報を受容できないことを知るべきだ」と指摘した。

後藤氏はこうした背景を踏まえ、「日本企業のオウンドメディアは、情報を並べて一方的に『伝える』カタログから、企業の想いが自然と『伝わる』メディアへと変革すべきだ」と言う。そのために必要な概念は「4つのM」だ。「Meet First(最初の印象で記憶に残す)、Mega Navi(どこからでもすぐに目的の情報にたどりつける)、Movie(動画によってよりリッチに、リアルに伝える)、Multi Device(どんな端末・場所でもアクセスできる)」。多くのグローバル企業では、この4項目が実践されている。

テキスト中心のカタログサイトを脱し、今後5年間形骸化しないオウンドメディアへと進化するためには、「ユーザーのココロが躍るUXデザイン」と「共創マーケティング」が欠かせない。その際、ユーザーとの最初の接点から購入、使用シーンまでをストーリー化する「カスタマージャーニー」を意識する必要がある。後藤氏は、その2つの手法を実践するグローバル企業の例を挙げた。

前者の手法として、GEやIBMが実践する「ストーリーテリング」、コカ・コーラのデジタルマガジン「コカ・コーラジャーニー」における「キュレーション」、メルセデス・ベンツによる「エモーショナルアプローチ」、デルタ航空の「ジャーニーオリエンテッド」と、4つの手法を紹介した。

一方、後者の手法としては、ボルビックの「1ℓfor 10ℓ」における「コーズマーケティング」、アメリカン・エキスプレスの「ユーザーレビュー」、ペプシコの「オウンドソーシャル」、アメリカでレクサスが実施した「シネプリント」の4つを紹介した。

「オウンドメディアを強化するための方法に答えはないが、改めて原点に立ち戻り、将来を見据えたあるべき姿に導くためのフレームワークはある」(後藤氏)と締めくくった。

宣伝会議 インターネットフォーラム事務局 2013
宣伝会議 インターネットフォーラム事務局 2013
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