登壇者 : 田中 猛(岡山市/政策局広報課)
一点突破を込めた「桃太郎市」
田中 猛(岡山市/政策局広報課)
「伝説の岡山市」というPRキャンペーンを行ったきっかけは、「岡山市って何があるんですか」と言われる現状でした。市長からのトップダウンは「とにかく知名度を上げろ」。予算要求中の一昨年秋に香川県の「うどん県」、続いて「おしい!広島県」がドーンと出て、ハードルが高くなったのを感じる一方で、行政が思い切ったことをやっても許される地盤ができたと感じました。
伝説の岡山市Webサイト
市の魅力や特色を岡山市出身の甲本雅裕さん扮する「市立探偵」が「知られざる都市伝説」を探るという切り口で紹介し、11本のムービーを制作。予算上、媒体はWebに絞りました。コンペを審査するのは上層部。現場担当の最終勝負であるオリエンシートに心血を注いだ結果、各事業者さんも普段の行政向けではない、はじけた提案をしてくれました。まず岡山市が何なのかを刻みつけるというオーダーに絞り切ったことで、とんがった仕掛けが生まれ、諸々が実現したと思っています。
複合的な仕掛けづくりへの課題
PRキャンペーンは「キャッチフレーズ・特設サイト・ムービー」の3本柱で進め、ネットユーザーのツボを意識した表現手法を求めました。プレスリリースは地元のマスコミと記者クラブ程度、あとはソーシャルメディアでの情報発信が日常化しているネットユーザーに刺さるものを作れば、必ずそこから拡散させてくれると踏みました。
結果、今年1月29日のティザー公開数分後には、全国紙のWebニュースに「岡山市が桃太郎市に改名?」というセンセーショナルな見出しが、約1時間後にはヤフートピックスにも取り上げられました。サイトには桃太郎市がフィクションであるというクレジットを入れましたが、「岡山市が桃太郎市に改名」というツイートがリンクなしにリツイートされていくのをリアルタイム検索で見ながら、考えていた情報フローが数時間で実現した反面、言葉の一人歩きというソーシャルの怖さも感じました。
反省点は3日後の2月1日公開の本サイトへのアクセスが、ティザーに比べて少なかったことです。この落ち込みは二段構えで取り組まれる際の課題にしていただければと思います。ユーザーに再訪する「義理」はありません。ティザームービーで満足するのでなく、その次も見に来ていただける運営をするには、ユーザーに実益をもたらすのか、またはアミューズメントなのか、ブランドなのかという、自分たちの立ち位置を分析する必要があります。岡山市のサイトは、見て、楽しんでもらうアミューズ系。ソーシャルメディアの運用も含め、私たちの思いをどういう仕掛けで伝えていくかは、正直、模索中でもあります。
Webを武器にさらなる展開へ
今回「伝説の岡山市」サイトを構築してから、「缶バッジないの?」とか「ステッカーつくらんの?」「ポスターちょうだい」などなど、目に見える形でグッズを求める人の声が市役所にたくさん届きました。
目的によっては手段は必ずしもインターネットである必要はないし、ソーシャルが万能ではない。リーチを広げる方策として、ネット以外にも目に見えるものを使って、地味でもいいからやっていくのがいいと思います。しかしまた、こんなに可能性のあるツールはない、とんでもない武器になるというのも実感です。特にツイッターの伝播力とその速度はものすごいものがあります。様々な課題に対応しながら、「伝説の岡山市」を続けていきます。