ミラノサローネ2014レポート VOL.1——夜中まで笑い声が絶えないデザインのお祭り

4月8日からスタートした「ミラノサローネ2014」。
メイン会場のみならず、ミラノ市内中心エリアのインテリアショップやメーカーのショールーム、ギャラリーなどでも、さまざまなイベントが開催される、まさに“デザインのお祭り”です。
このイベントに2012年より参加しているグラフィックデザイナー 柿木原政広さんに、現地からレポートしてもらいます。

柿木原政広(10inc.)

ミラノの街全体を会場にして行われているミラノサローネ。
「ミラノ国際家具見本市」が正式名称ですが、家具などプロダクトの展示だけではなく、映像やインスタレーションなども多く行われ、まさに“デザインの祭典”のようになっています。
この期間(今年は4月8日~13日)、ローフィエラミラノの本会場が賑わうのはもちろん、トルトーナ地区やブレア地区など、街のいたるところで展覧会が行われており、街全体が活気づいています。100万人以上の人々が来るそうです。それゆえに、トルトーナ地区にかかる短い陸橋は、混雑時には渡るのに数十分もかかってしまうほど。でも、その混み具合もみんな楽しんでいます。
会期中、市電は12時過ぎまで運転。レストランは深夜を過ぎても営業し、あちこちから笑い声が響いています。
世界のいろんな企業がデザインで競い合っていて、それでいて権威的にならずに、街全体が一般の人も含めて楽しみながら参加している様子が、僕はとても好きです。
近年、企業とデザイナーが組んだインスタレーションの出展が増え、これを見るのがミラノサローネの一番の醍醐味。実際見て感じるのは、ミラノの歴史のある重厚な空間に、大胆かつ繊細なインスタレーションがマッチしていることです。実際に、現地でないと魅力が伝わらないものも多くあります。
また面白いのは、情報がうわさ話のように飛び交っていること。例えば今年は「CITIZENのブースがいいよ」の声が、あちこちから聞こえてきました。チャレンジングな企画は、きちんと評価が帰ってくる場所なのだと思います。

nendo「space dipped shirts」 for COS

Via Delle Erbe 2では、nendoによる「space dipped shirts」 for COSが開催された。H&Mグループよりスタートしたヨーロッパで人気のファッションブランド「COS」のための展示で、ブランドの代表的な商品である「白いシャツ」を使ったインスタレーションが行われた。

MITメディアラボ 石井 裕&タンジブル・メディア・グループ「TRANSFORM」

「LEXUS DESIGN AMAZING 2014 MILAN」に出展されたMITメディアラボ 石井 裕 & タンジブル・メディア・グループによる「TRANSFORM」。1000本余のピンの上下運動をリアルタイムにコントロールできる3つのダイナミック・シェープ・ディスプレイをエンジンとして組み込んだテーブルで、センサーにより知覚された、人々の運動エネルギーに反応して、テーブルトップの3次元形状が、ダイナミックに波動的に変化する。

パナソニック「SLIDING NATURE」

ミラノ大学内 コルティーレ・ファルマチアで開催されたパナソニックの「SLIDING NATURE」は、住環境と自然が呼応する空間を大型引戸とLED照明を用いて表現した展示。トラフ建築設計事務所が展示構成を手がけた。パナソニックは7年連続出展している。

シチズン「LIGHT is TIME」

本会場イベントとは別に構成、開催されるイベント「FUORI SALONE」に初出展したシチズン。テーマは、「LIGHT is TIME」。シチズンのデザインチームとパリを拠点に活躍する建築家・田根剛氏(DGT)によるインスタレーションは、時計の全ての部品を支える基盤装置である地板を8万個使用している。

柿木原政広(10inc.)
1970年広島県生まれ。アートディレクター。ドラフトを経て2007年に株式会社10(テン)を設立。主な作品にsingingAEON、まいにちAEON CARD、R.O.Uのブランディング、東京国際映画祭、静岡市美術館、松竹芸能株式会社、富士中央幼稚園の企業デザイン。2013年カードゲーム「Rocca」がフランス国立図書館にパーマネントコレクションに。本年度ミラノでは、広島のマルニ木工と制作したRocca SPIELEの新作「Decco」をお披露目した。

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