【前回のコラム】「「体験」を見える化することで浮かび上がる「旅」ーー「カスタマージャーニー」」はこちら
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
いまさらエンゲージメント、だからこそエンゲージメント
デジタルマーケティングに関わる人々が日常的に使っているこの言葉ですが、実際とても多く使われている反面、意味がよくわからないのが正直な感想です。ただ言えるのは昔からあったものではなく、間違いなくインターネットをはじめとするネットワークや、ソーシャルメディアなど、近年のデジタルテクノロジーによって前景化されてきた考えだということです。今回はこのエンゲージメントという言葉を、その意義から解説していきたいと思います。
エンゲージメントとはソーシャルメディアだけのもの?
まずエンゲージメントとは「かかわり」などと翻訳されることがありますが、ほとんどはそのままの言葉で使われています。そしてよくあるケースはFacebookなどのソーシャルメディアのインサイトの数値を指して、ファン数は10万人いるけれど、日々のアクティブなユーザーの割合は2%しかいないので、エンゲージメント率が低い、などと言ったりします。これはかなり限定的な使い方ですが、よく聞く使い方です。ソーシャルメディアではいいね!しているなどのアクションそのものもエンゲージメントと呼ぶことがあります。それではエンゲージメントとはソーシャルメディア特有の言葉なんでしょうか。
直接的な「関係」から間接的な「かかわり」へ
これまでのマーケティングではエンゲージメントに近い意味では、リレーションシップ(関係Relationship)やロイヤリティ(忠誠心Loyality)という言葉が使われていました。これらの言葉はOne to OneマーケティングやCRMなどの文脈から生まれて、企業が顧客に対して直接働きかけるダイレクトマーケティングを延長したものから生まれたように思います。これらはすべて見込み顧客や既存顧客に分けられるような顧客データベースやリストをもとにした直接的なマーケティングという意味が強かった。
一方エンゲージメントについては、本質的にそういったことを内包しているのですが、デジタルテクノロジーのおかげで、購買を見越したメール会員登録のようなものだけでなく、より間接的なかかわりが見えるようになってきたのが、大きな特徴です。特にソーシャルメディアでのいいね!などのアクションは、その人が継続的にそのブランドのどの投稿に興味を示したか、といった従来のダイレクトマーケティングではわかりにくい中間的な指標を明確にしてくれるところが画期的だったわけです。