惜しい!文字の並べ方——《ひと目でわかる》改行を

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“ひと目でわかる”というのは、まさしく《目玉を動かさなくてもわかる》ということです。

 [写真左]の惜しい掲示、3行目の「Xiスマ」を見ただけではオヂさんには何のことだかピンと来ず、目玉を左下に動かして4行目の左端を見ることで初めて「あ~、スマホの機種名のことね」とわかります。さらに、それと同じ苦労が、「機種変→更」、「2→万円」と各行ごとに繰り返され、その都度“ふた目でわかる”状態です。これって、掲示を見る人にとっては、ビミョーにストレスです。

 手作り感あふれるこのポスター、おそらくこのショップの店員さんが、1枚に2文字ずつの特大フォントでプリントアウトした紙を18枚並べて、一生懸命貼り出したのでしょう。その努力を無にしないよう、何の刷り直しもせずに、ただ並べ替えて出来る範囲内で改良したのが、[写真右]です。
 
 「今、」という1枚を、ただ一番下の行に移して、あとは順繰りにズラすだけ。でもこれによって、「Xiスマホ」も「機種変更」も「2万円」も、1つの行の中に納まって、“ひと目でわかる”ようになりました。忙しい通行人がパッと見た時、一瞬でメッセージが届くのは、どちらでしょうか。

 今回のポイントは、《改行にちょっとの気遣いを》ということです。なるべく、意味のかたまりがバラバラにされない所で改行した方が、頭にスッと入りやすい表示にできます。そのためには、上の例のように少しだけ語順を入れ替えてみるとか、「行の右端で改行!」と決めつけず、意味の切れ目で早めに改行してみるとか、工夫の仕方はあなた次第です。

似たような例は、街で沢山見かけます。どうせ5文字と3文字に分かれるのなら、

 「この先行き
  止まり」

よりは、

 「この先
  行き止まり」

もし、各行同じ字数を厳守という几帳面な規則が無いのなら、

 「生ものですので開
  封後はお早めにお
  召し上がり下さい」

よりは、

 「生ものですので
  開封後はお早めに
  お召し上がり下さい」

—の方が、読み手にスッと届きますよね。

(ならば、このコラムの見出しの改行も工夫しろよ!と言われそうですが、Webページ上の改行点は、受信側のパソコン端末の文字サイズ設定などによっても崩れるし、検索での引っかかりやすさにも絡んでくるので、当欄の趣旨とはちょっと違った話になります。あしからず。)

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下村 健一(慶応義塾大学特別招聘教授)
下村 健一(慶応義塾大学特別招聘教授)

1960年東京都生まれ、東大法学部卒。TBS報道アナからフリーに転じ、「サタデーずばッと!」、「NEWS23」などに出演。2年間の内閣広報室審議官(民間登用)を経て、現在、関西大・白鴎大などでも教鞭を執る。主著『首相官邸で働いてみて初めてわかったこと』(朝日新書)。

HP:http://shimomuraken1.com/
twitter:ken1shimomura

下村 健一(慶応義塾大学特別招聘教授)

1960年東京都生まれ、東大法学部卒。TBS報道アナからフリーに転じ、「サタデーずばッと!」、「NEWS23」などに出演。2年間の内閣広報室審議官(民間登用)を経て、現在、関西大・白鴎大などでも教鞭を執る。主著『首相官邸で働いてみて初めてわかったこと』(朝日新書)。

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