ブランドとのエンゲージメントを強化するカップヌードルのデジタル戦略——SIMC2014レポート

講演者

市川 裕也(日清食品ホールディングス 宣伝統括部 主任)

画面上を悠然と歩くマンモス。その後ろを、腹ペコの原始人たちが追いかける――。1993年にカンヌ国際広告映画祭でグランプリを受賞した「hungry?」シリーズに代表されるように、日清食品「カップヌードル」では、ユニークなテレビCMに注力してブランド認知を高めてきた。しかし、近年のインターネットの台頭で、若年層を中心にテレビに接する機会が減少。日清食品ホールディングス宣伝統括部の市川裕也氏は「テレビCMを重視してきた当社にとってこれは重大な変化。デジタルへのシフトが課題となりました」と振り返る。

今やカップヌードルのFacebookページはファン数約25万人に上り、エンゲージメント率も高い人気ページだが、初めから順調だったわけではなかった。2012年3月にFacebookページをスタート。当初は創業者である安藤百福氏によるカップヌードル開発ヒストリーやマーケティング担当者のコメントなどを投稿していたが、反応はいまひとつだった。「いわゆるFacebookらしい投稿ではあったのですが、日清食品らしい『Uniqueさ』に欠けていました」(市川氏)。

日清食品ホールディングス 宣伝統括部 主任 市川 裕也 氏

そこで、社内に宣伝統括部やマーケティング部など横断的なプロジェクトチームを発足し、Facebookを通じて何を発信すべきかを検討した。「日清食品の面白さに共感してくれる人に、日清食品らしいUniqueさをどう伝えるかを重視しました。また、ブランド認知が弱いことが課題になっている若年層をターゲットにコンテンツを用意しました」。

その後は、海の日にシーフードヌードルの形のサンドアートの写真をアップしたり、カップヌードルをデザインしたキャラ弁の投稿などユニークさにこだわった投稿を続けた。こうした取り組みが奏功し、2012年7月ごろから順調にファン数やコメント数が増加。また、エイプリールフールに投稿したお湯を注いで3分でできるプリン「カップリン」発売という記事は過去最高の反響を呼び、ファンが本当に喜んでくれるコンテンツとは何なのかを再確認することとなった。

2013年5月からは新たなFacebook活用法として、リアルと連動した試みを展開。例えば、カップヌードルデザインのだるまやダンボールで作ったカップヌードルなど、カップヌードルをモチーフにしたアート作品を投稿し、これを神奈川県横浜市の「カップヌードルミュージアム」で展示した。市川氏は「Facebookだけではコミュニケーションできなかった層にもリーチできましたし、ミュージアムの集客増にもつながりました。他社が取り組んだことがないFacebookとリアルとの連動が実現できたと思います。デジタルを活用するときは、何を発信したいか、そのために適切なメディアは何なのか。本質を見極めることが重要です」と強調した。

宣伝会議 インターネットフォーラム事務局 2014
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