【前回の記事「長い商品コピーを、最後まで読んでもらうには?」はこちら】
これまで2回にわたって、ルポルタージュの手法を取り入れる商品コピーの書き方について考えてきました。「ルポ的」の大きな目的は2つ。コピーの内容を「信じてもらう」ことと、長いコピーを「最後まで読んでもらう」ことです。この2つの条件が整えば、あとは「商品の実力」次第でしょ?と思われるかもしれませんが、通販コピーは「買ってもらう」ところまでが仕事です。仕上げとして「最後の一手」について触れておきましょう。
次の一文は、コピーライターのバイブルといわれる、ハル・ステビンズの著作『コピー・カプセル』からの引用です。一般コピーのタイトル(ヘッドライン)とサブタイトル(サブヘッド)の役割について触れた文章ですが、「説得」を目的とする通販コピーにこそ重要なポイントが書かれています。
《ヘッドは感情に訴えなければいけない。人びとの生きている所–感情の中心に訴えなければいけない。サブヘッドは知性に対する即座のアッパーカットでなければならない。サブヘッドは製品と読者の生活を結びつけ、製品を買うことの合理性を説明しなければならない。》
※『コピー・カプセル』ハル・ステビンズ/著 小正幸造/訳 坂本登/訳
つまり、ヒトは「知性」と「感情」の2つの回路で物事を判断する。相手を倒す=商品の購入に導くためには、両方向からの攻撃が必要だ!ということです。
商品を「デジタルカメラ」として考えてみましょう。「最大50枚/秒の高速連写が可能!」とか「1000fpsハイスピード機能でスロー再生ができる」といった機能説明は、読み手の“知性”に訴える情報です。しかし、こうしたスペック要素をいくら並べても商品の購入には至りません。高性能は解ったけど、どんなときに便利なのか?そもそも自分に必要か?
似た機能でもっと安いのがあるんじゃない?と、読み手はさまざまな疑問や不安を抱きます。それらを取り払うのが、“感情”に訴えるコピーです。「子供の運動会もこれで失敗がなくなるよ!」とか、「これ一台でゴルフスイングのセルフチェックもできるよ!」。あるいは、「この機能つきでこの価格はなかなか見つからないよ!」と安心させていく。そして買う側の「迷い」が消えた時、最終的な「よし、買おう!」が近づいてくるのです。えっ!まだ買わないの?
もちろん、買う側の前のめり具合によっては買ってくれるかもしれません。でも、通販の買い物は一期一会ですから、「理屈は解ったけど、またそのうちにね!」とその場をかわされる機会も多い。そういう「読み逃げ」をされる場合のコピーは、たいてい「商品のことをまんべんなく伝えているけど、とくに印象に残ったフレーズはない」状態になっています。
そこで、「一発で買ってもらう率」を高めるために、ぜひ試してもらいたいのがこの一手です。あなたが書き上げたコピーの中で、「ここが一番の説得のしどころだ」という部分を見つける。そして、そこに読み手の「感情」を刺激する要素を1つでも2つでも「盛って」ください。
たとえば、先ほどのデジカメの運動会の例なら、「これさえあれば、運動会で息子が手を上げて1位のテープを切る瞬間が撮れる!」とディテールを伝えながら、実際の写真も添えてみたらどうでしょう。また、ゴルフのスイングチェックの説明に加えて、「あなたはどのタイプ?“症状別”克服ポイント解説」というWEBページを作ってアクセスできるようにしたらどうでしょう。
大事なのは、読み手に自分のこととして考えさせる「一瞬」を作ることです。そして、「あの広告に書いてあった話」として印象づけることです。コピーを読み終えた後も、しばらく読み手の頭の中に残像として刻まれるようなインパクト。思わず友人におしゃべりしたくなるエピソード。そんな観点から少しマニアックでもかまいませんから、できるだけ記憶に残るような1シーンを作り上げてください。
前回と同様に「通販生活」(カタログハウス発行)の例ですが、こんなケースがあります。