中村耕史(クックパッド トレンド調査室 ディレクター)
ここでは、『販促会議』2014年10月号に掲載された連載「検索ワードから考えるクロスMD施策」を紹介します。
検索データとPOSデータの関係
過去2回の連載では“ニーズの実績”である検索データの特徴について解説した。今回は、検索データとほかのデータソースとの統合的な分析により得られることについてお伝えしたい。
例えば、POSデータと検索データを統合すると、購入から消費までのサイクルが短い葉物野菜は検索とPOSの連動性が高く、じゃがいもや玉ねぎのようなストック食材では連動があまり見られないといったことから、ストック食材の消費タイミング把握にも検索データが役立てられるのではないかと考えられる。また、POSと重ねて分析することで売り逃しがないかを確認したり、バスケット分析を行う前に、より直感的に季節ごとの食卓の変遷を概観できる「たべみる」の組み合わせ検索語を確認するといった方法も行われている。「たべみる」の利用企業は、POS データを始めとするほかのデータソースとレシピ検索データを組み合わせて利用している場合が多いという。複数のデータソースを用いた分析には、コストも手間もかかるが、購買関連データは参入企業も増加し、小売業のPOS開示も一般化するなどハードルは確実に下がってきている。
裏を返せば、データを購入してそれを提案資料に使うだけでは不十分で、「どういう視点で市場を捉えるか」「どういった仮説を検証したいのか」など、事業目的の達成のためにデータを使い倒すような姿勢がより一層求められる時代になっている。
■データを理解するうえでの用語解説
- 季節指数: SI値の年間平均を100とした、集計期間における値。
- 掲載ランキングデータのように季節感を把握する際に利用できる。
検索データから見える11月、12月のイベントMD施策
11月に検索ピークをむかえる「芋煮」は、東北での検索頻度が全国の4倍程と高い。調理方法は、豚汁風、とりすき風、すき焼き風、寄せ鍋風と地域によって違いが見られる。「たべみる」では、豚肉が最もよく組み合わせて検索されている食材であることから豚汁風が最も一般的であることが伺える。なお、豚汁風が主流とはいえ、店頭では“今夜は「里芋入り豚汁」”ではなく“今夜は「芋煮会」”とした方が生活者にとっての「コト」提案になる。
12月は食に関連するイベントが数多くあるが今回は「冬至」に注目してみよう。「冬至」の組み合わせ検索語は、かぼちゃ、あずき、ゆずといった定番食材が毎年1位~3位を独占している。メニューはぜんざい、おしるこ、いとこ煮といった郷土色が強いものが上位で、食材のようには定番が確定していない。今後、「恵方巻き」のように新たなメニューが生まれる余地があるイベントと言えるだろう。
なお、いとこ煮は元々、北陸地方の根菜類とコンニャク・油揚げなどを煮たものに、事前に下ゆでした小豆を加えた料理だが、クックパッドに投稿されている「いとこ煮」を見ると「かぼちゃとあずきの煮物」であり、メニュー自体の捉え方が変化していることがわかる。
Case Study
カゴメ、「ハロウィン×野菜」の店頭企画を提案・実施
「ハロウィン」の検索頻度は年々高まっており、日本記念日協会によれば市場規模も2013 年時点で1000 億円程度と一大イベントに成長している。市場拡大に伴い「ハロウィン」と組み合わせて検索されるメニューも多岐に渡るようになっており、折り込みチラシでもかぼちゃを使ったメニューだけでなく、パーティメニューを打ち出す企業も出てきている。
そんな中、カゴメはハロウィンを「やさいオバケの楽しいイベント」として食卓提案を実施する予定だ。
「ハロウィン」と組み合わせて検索される野菜はかぼちゃ、さつま芋、人参、じゃがいも、トマトの順で多い。中でもトマトは、下のグラフの通り11 年から3 年連続でマッチ度※が上昇していることや、「トマト鍋」が鍋類の中でも検索頻度の上昇が比較的早いこともあり「ハロウィントマト鍋」を中心とした展開を行う。
なお、昨年のハロウィンはミツカンの施策の成果か「ハロウィン×寿司」の検索が躍進した。今年は各社の提案がどのように食卓に反映されるか注目だ。
※マッチ度:指定検索語を分母とし、組み合わせ検索語が指定検索語と組み合わされて検索をされる割合。例えば「ハロウィン×かぼちゃ」のマッチ度は以下の式で表される。ハロウィン×かぼちゃの検索回数÷ハロウィンの検索回数×100。
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