高城剛×田端信太郎「世界を俯瞰すれば見えてくる、広告・身体・メディアの次の姿って?」

力のある個人の時代
個人と組織の関係はどう変わる

田端:次に「個人が最強のメディア」をテーマにお聞きしたいと思います。携帯メールが流行り出した頃の高城さんの名言に、「女子高生にとって最大のキラーコンテンツは彼氏からのメールである」というものがありました。今、個人がどんなコンテンツより面白い時代です。組織と個人のパワーシフトが起こっていて、かつての「組織で下積みをする」とか「組織が個人を育てる」考え方が通用しなくなっている。イケてる個人が組織に属す意味が見えづらくなっています。

高城:出版社から本を出すと印税は10%だけど、キンドルで個人出版すると70%入る。世の中、直販モデルになってきていて、それは音楽の世界でも起きている。間違いなくテレビ(映像)でも起きるでしょうね。カナダ発の「ヴァイス マガジン(VICE MAGAZINE)」なんてその典型で、フリーペーパーから始まって、今では世界最大のインデペンデントメディアになりつつある。メディア王といわれるルパート・マードックが出資したのも、彼らがテレビではタブーだとされるような話題に切り込んで、視聴者が見たいものを提供しているからですよね。

田端:電子化というと、「紙VSデジタル」の構図ばかり言われてきたけれど、直販モデルかどうかが問題だということですね。

高城:自分でアイデアやマーケティングセオリーを持っている人は、個人でいくらでも生かせると思うよ。インターネットがすごいのは5年後も7年後もずっとお金が入ってくる仕組みを個人が持てることです。

田端:でも、本当に面白いものを作れる人って、そんな降ってわいたように出てくるのかな?という疑問もあります。あえて保守派的な立場から言わせてもらうと、そういう人って結局、テレビ局やプロダクションから出てくるのでは?という気がするんですが。

高城:アメリカの状況を見ていると、既存メディアに関わる人が7割、全くのニューカマーが3割くらいという感覚かな。

田端:そういうニューカマーはどう育つんでしょう? 大学出たてでマーケティングセオリーを持たない人間が、組織に属さずにどう育つのかが気になります。インターンとか?

高城:インターンは、コネづくりなんですよね。郵便物を仕分けして各部署に届けているうちに顔を覚えられて、人手不足の時に「あのインターンはよさそうだから任せてみよう」という話になる。

次ページ 「ブルックリンと中央線 グローバルマーケティングの作法」へ続く

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