前回はデジタルマーケティングを組織で推進していくために必要な中央組織、Center of Excellence(以下CoE)について触れました。今回はこのCoEの役割についてもう少し掘り下げ、改めてその必要性、実際にCoEを構築していく時のタスクについて触れていきたいと思います。
CoEの主要な機能
アドビシステムズ
グローバル サービス統括本部
コンサルティング サービス本部
DMSコンサルティング部 安西敬介氏
デジタルマーケティングのCoEは、企業のデジタルマーケティングを推進することを目的とした、専門集団でなければなりません。そしてこの<デジタルマーケティングの推進>を行うため、様々な活動を行っていくことになります。そしてCoEに求められる主要な機能は以下6つの切り口でまとめることができます。
- Governance(ガバナンス)
- Process(プロセス)
- Knowledge(ナレッジ)
- Measurement(計測)
- Training/Support(トレーニング/サポート)
- Culture(文化)
それでは、それぞれの項目のより具体的な内容について掘り下げていきましょう。
ガバナンス
Forrester社の調査によると複数のチャネルを通じてブランドと接している顧客は60%以上にもなります。(参考:Forrester 2012 Nov)また、90%以上の顧客は店頭で購入する前にオンラインで情報を確認しているというEconsultancy社の調査などもあります。(参考:Econsultancy 2012 Sep)
これら調査からもわかる通り、顧客の行動はPCとスマートフォン、アプリなど複数のチャネルを跨ぐことが非常に多くなってきています。
そのため、これまでのWebサイトの運営のみ、モバイルの運営のみ、メールの運営のみといった、関係部署がそれぞれのチャネルだけを見てアクションしていると、異なるユーザエクスペリエンスを提供してしまう懸念が高まります。
顧客視点で考えるのであれば、これからのデジタルマーケティングでは、顧客との接点があるポイントを統合して運用していく必要があります。
つまり、デジタルマーケティング戦略を、チャネル毎に組み立てるのではなく、チャネル横断的に一貫したものとして策定・管理していく必要があります。デジタルマーケティングCoEにはまさに、このようなデジタルマーケティング戦略/戦術の管理を行うことが一つの役割として求められます。
また、上記以外にもCoEのガバナンス機能に求められるものとして、デジタルマーケティングに関わる意思決定・施策のプライオリティ付けやIT部門やマーケティング部門など関係する複数部門との調整、施策に関わるリソースマネジメントなどが含まれてきます。
プロセス
意思決定をするだけではデジタルマーケティングを推進することは出来ません。組織が適切なアクションが取れるようにしていくプロセスの整備が必要となってきます。
具体的にはフォーマットや実施プロセス・ワークフローの整備などがあげられます。戦略が決まってくるとキャンペーンの実施など具体的な施策を担当者が起案したりするようになります。
それぞれが、それぞれのフォーマットで起案をしてしまうと、仮説がボケてしまったり、データに基づかないものとなってしまったりなどし、プライオリティの比較ができず、結果として意思決定が難しくなります。
例えばキャンペーンの実施であれば、その目的、評価するコンバージョン、目標値、過去に行った似た施策の結果、実際のワークフローなどをフォーマット化しておくことで、検討に必要な要素の漏れが少なく仮説もデータに基づくようになり、CoEとしても意思決定がしやすくなります。
また、デジタルマーケティングの意思決定などに関わる会議の設定や社内の問い合わせフローの整備などもプロセスに含まれます。
弊社のプロジェクトにおいても、このようなプロセスを整備し、週1回のCoEによるキャンペーン実施可否の意思決定会議を持ち、そこに合わせて起案フォーマットをディレクターが作成、起案したものが承認されれば実施、終了後はすみやかにフォーマットに従い評価を行うというフローを実施することで、PDCAをしっかりと回せるようになったケースもあります。
ナレッジ
マーケティングを効率的に行うには、実施した施策を評価し、良かったものを残し再活用していく必要があります。そのためにも社内のナレッジを収集、アーカイブ、再利用できるようにするナレッジマネジメントも非常に重要な要素です。
社内的に実施したベストプラクティスを収集、評価し、アーカイブし検索できるようにしていくことも中央組織だからこそ出来ることと言えます。Wikiや社内ポータルを利用する会社も多くなってきています。
また、デジタルマーケティングは技術の進歩も早く、個人で情報収集をしていくのには限度もあります。外部の情報収集も行い、関係者に必要な情報をキュレーションしていくことも、CoEが担うべき重要な役割になります。