コピーライターはキャバクラ嬢と似ている?——若手トップクリエイターたちによる特別座談会(2)

デジタル化やメディア環境の変化など、さまざまな理由により、現代のコピーライターの仕事内容や求められる役割が変わってきた。それによって、若いコピーライターもしくはコピーライター志望者からは、目指していく方向や、身に付けなければいけないスキルに迷いを感じているという声がよく上がる。そこで今回、「コピーライター養成講座 先輩コース」の開講を記念して、そういった迷いや悩みのある20代の若手に向けて、講師を務める3人の先輩コピーライターによるトークショーが、下北沢B&Bにて開催された。若い世代のコピーライターが生き残っていくためのアドバイスや、コピーライターという仕事について、スランプに陥った時の対処法についてなど、本音で語った。

【前回コラム】「コピーライターに「才能」はいらない?——若手トップクリエイターたちによる特別座談会(1)」はこちら

電通 コピーライター
阿部 広太郎 氏
 ×
meet & meet コピーライター
小藥 元 氏
 ×
博報堂 コピーライター
下東 史明 氏

コピーライターのフィールドは、無限にある。

—コピーライターがこれから生き抜いていくために必要なことや、身に付けていくべき能力とはどんなものですか?

阿部:そもそも、みなさんがコピーライターという職業をどう捉えているのかが気になります。もしかしたら、古いとか、時代遅れと思っている人もいるかもしれません。弊社でも、コピーライター志望の人は減っていて、ストラテジックプランナーやコミュニケーションデザイナーを目指している人が多いと聞いています。

でも僕は、コピーライターって可能性に満ちた職業だと思っています。コピーを書くときに使っている頭の働きを、どんどん色んなところに活かせばいい。たとえば商品開発とか、作家の創作のアドバイスをするとか、アーティストと一緒に何か作るとか。そのために必要なことは、専門分野を持っている人と対等に話せるだけの思考力や、今の世の中をどう見ているかとか、今の時代の空気をどう考えているといった意見を持っていること。価値観の多様化が進む激動の時代だからこそ、言葉で時代をひとつかみにできる力が強みになる。そこを軸足にして、どんどん動いて働きかけにいく、というのがコピーライターという肩書を持つ人が活躍していくことなのではないかと思います。

小藥:独立してから、色んな人に会って話す機会が多くあるのですが、はっきり言って「コピーライターってこういうことをする人」っていう認識を持っている人は少ないと感じます。コピーライターは守られた業界の中でのポジションというのも痛感しています。

阿部さんがお話しされたように、コピーライターが活躍できるフィールドって本当はもっと広くて深いはずなんですよね。企業や担当者の方からするとコピーライターは「気の利いた一行を書いてくれる人」みたいな表層イメージが付いてしまっているので、「僕にはあなたが思っている以上の仕事ができる」っていうのを示して、コピーライターのイメージを変えていくとか、結果を出していくとか、地道なことですがそれしか無いという気はしてます。

コピーライターっていう肩書が、ものすごくコピーライターの仕事の邪魔をしてしまっているというか、小さくしてしまっているというのは、最近すごく感じますね。「ブランドプロデューサー」と言われた方がなんか大きいこと任せそう、みたいな。

下東:みんなコピーライターに対して否定的だね(笑)。僕はコピーライターって「各それぞれのメディアで最適な言語表現を考える人」だと思っているので、例えば本屋のPOPでなんか書いてくださいと言われたら、POPっていうメディアにおいて最適な言語表現を作るのが仕事。それはテレビCMもそうだし、グラフィックのポスターもそう。

基本的に広告って、「情報と印象」でできている。情報とは「新発売」とか、「この性能が上がりました」とか、広告に触れた人にとって得をもたらすもので、情報を言語表現にして伝えるのがコピーライターの仕事。印象っていうのを作っているのがアートディレクターで、広告を見た人にその商品を好きになってもらうのが仕事。そこで、情報を単なる情報として伝えただけだと、広告に触れた人は自分に得があると思わないので、そう思うような言語表現に置き換えて、情報を人に届けるっていうのが、コピーライターのやるべきことだと思います。

これからの時代を生き抜くためには、今はWebも含め、新しいメディアが増えたので、情報を伝えるためにどのメディアが最適で、どんな言語表現が最適なのかっていうところまで、コピーライターが考えなくちゃいけないんじゃないかなと思います。

今後コピーライターの考え方や能力はどんなフィールドで発揮されていくのでしょうか?

阿部:最初に僕は「言葉を味方につける」と言いましたが、そう考えると、言葉があるところならどこでもコピーライターがテコ入れできるような仕事はあるような気がしますし、これから活躍できるフィールドって無限にあると思っています。広告の考えは、そもそも商品の中に入って無いといけないと、糸井重里さんが仰っていたと知りました。コピーライターは広告表現という外側だけじゃなくて、商品や企業や経営者の中に入っていけると思うので、そういう領域を開拓していきたいと思っています。

小藥:僕は人に流されないことがすごく大事な気がしています。今の世の中がどうとか、時代がどうとか、コミュニケーションデザイナーになった方がいいのかな、とかというのは肩書だけの話であって、本人がどう生きたいかが本当は一番大事だと思います。今の広告業界って何屋なのかわからない人がすごく増えてしまっているなあという気もしますし。ただ明確に思うのは、言葉というのはコピーライターが明確に持っている武器なので、軸足をちゃんと持ちながら自分がやりたい、いいと思う仕事を一個一個やっていくのが一番いいと思います。

下東:この質問って、コピーライターという職業が持つポテンシャルっていうことですよね。広告業界以外の人って意外とコピーライターが何しているのかを知らないので、これからコピーライターという仕事を知る人は増えていくと思うし、増やさなければいけない。そうなれば今までと同じことをしていても、仕事のフィールドは増えていくと思います。

次ページ 「コピーライターはキャバクラ嬢と似ている?」へ続く


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