企業の未来を形作る構想を言葉やビジュアルで表現し、実現に向けて力を尽くす。そんなクリエイターとパートナーシップを結んで大きな変革に挑戦し、着実に成功を積み重ねている経営者がいます。
「伸びている企業の経営者のそばには、優れたクリエイターがいる」――経営者×クリエイターの二人三脚で他にない価値を生み出そうとしている事例を紹介します。
【バックナンバー】
・最高級国産絨毯「山形緞通」のブランディングデザイン
河邉哲司(久原本家グループ本社・代表取締役社長)×水野 学(グッドデザインカンパニー)
──お二人が出会ったきっかけは?
河邉 だしや醤油、酢といった調味料を扱うブランド「茅乃舎」のブランディングをスタートしたのが2012年8月。水野さんとの出会いのきっかけは、海外に向かう飛行機の中で、機内番組を見ていた時のことでした。
麻織物の老舗・中川政七商店の若き13代目、中川淳さんの新しいブランドづくりが紹介されていて、私はそのデザインに一目で惚れ込んでしまった。中川さんご本人から、デザインを手掛けているのは水野さんだと伺い、紹介していただきました。
中川政七商店と当社では、扱う商品は全く違いますが、古い業界に身を置く者同士、状況は似ている。共感すると共に、現代の人々にも広く受け入れられるブランドをつくり上げることは、我々にもできるのではないかと思いました。
水野 初めてお会いした時、河邉社長は「茅乃舎のブランドをきちんと構築していきたい」とおっしゃっていましたね。
河邉 もともと当社は、醤油やだしなどの加工調味料を作って、スーパーマーケットや小売り店、食品工場に売るというBtoB事業を主力としていました。デザイン性にこだわる必要はあまりなかったと言えます。
それが茅乃舎というブランドを立ち上げてからは、商品をいかに売るかということをより本気になって考えなければならなくなった。
そこで当社では、商品パッケージ、商品カタログ、広告といった、一般的には外注することが多い業務を、すべて社内のクリエイティブ部門「クリエイティブ事業部bios」で内製するようになりました。
これらはお客様との最初の接点であり、製品づくりと同じくらい大切なことだと考え、こだわりを持って丁寧につくってきました。いくら良いものを作っても、手に取って、買ってもらえなければ次に進みませんから。
しかし2010年4月に東京・六本木の東京ミッドタウンに出店してみて、周りのブランドのレベルの高さに驚いた。もっと勉強して、もっと良いものをつくり上げて、ブランドとしてより成長したいと強く思いましたね。
ありがたいことに、出店後しばらく経っても多くのお客様に来ていただき、売上は着実に上がっていましたが、このままでいいのだろうか?もっと上に行けるのではないか?――その思いはずっとありました。
水野さんとお会いした2012年は、ちょうど2014年3月開業の「COREDO室町3」への出店の話をいただいた時期だったこともあり、次の段階へステップアップしたいという思いがより強まっていました。
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