約86%という高い送客率を実現したO2O2O
——名古屋駅のデジタルサイネージでの実証実験について教えてください。
森川 JR名古屋駅のコンコースに設置されているデジタルサイネージ「シリーズ・アド・ビジョン名古屋」を利用したクーポン配信の実験です。
利用者がデジタルサイネージを見て、凸版印刷が提供している電子チラシポータルサイト「Shufoo!」のスマートフォンアプリを起動すると、サイネージに設置されたBluetoothタグから情報がプッシュ配信。そこから特設サイトへアクセスし、アンケートに答えると、サークルK・サンクスで利用できる「キリン一番搾り生ビール(350ml)缶」の無料引換クーポンが発券されるというものです。
交通広告からアプリを起動させ、実店舗へ送客させるというO2O2O (OOH to Online to Offline)の有効性を検証しました。
——そこから、どのようなことが分かりましたか。
森川 デジタルサイネージは認知効果だけでなく、送客の効果を発揮することが分かりました。今回、クーポンを取得した人は合計で約1500人。その内の約86%もの人を実店舗へ送客できました。他の事業でもこうした取り組みを行ってきましたが、ここまで高い送客率は初めてです。
佐藤 この高い送客率は、クーポンを移動中に取得できるという点から実現できました。多くの場合、駅から家までの間に必ずコンビニがあるため、クーポンを取得するという動きを「移動者マーケティング」のように上手く組み込めたのです。
森川 さらに面白かったのは、後半になるにつれて効果が伸びたところ。視認性の高いデジタルサイネージは、流し続けることで利用者の記憶に残ります。繰り返し広告に接触することで、さらに効果が高まることが分かりました。
川合 この実証実験以降、さまざまなクライアントや全国の鉄道会社系のハウスエージェンシーを始めとする広告会社から問い合わせが寄せられました。デジタルサイネージの導入後すぐに実証実験を行ったことで、この「シリーズ・アド・ビジョン名古屋」自体の認知拡大にもつながったことを実感しています。
名古屋駅という場所を活かし、送客までをパッケージ化
——この実験を通じて感じた課題は何でしょうか。
佐藤 難しさを感じたのは、15秒という放映時間のなかで、利用者に施策の内容を理解してもらうこと。今後、このようなO2O2O展開の事例を増やすことで、交通広告でキャンペーンや施策を認知し、スマートフォンでお得な情報やクーポンなどを入手するという行動を多くの方に経験してもらい一般化させる必要性も感じました。
森川 確かに、そうですね。クーポンの取得までには、サイネージを確認し、アプリを起動するなどの行動が必要でしたからね。今回はクーポン取得者の7割が20~30代でした。さらに年齢層を広げていくためには、説明的ではなく直感的に情報を伝える工夫が必要だと思います。
川合 マスメディアへの接触が少ない20~30代に対して効果を上げられるのは、生活動線上メディアとしての交通広告の強みだと改めて実感しました。また媒体社として、広告による認知向上だけでなく、駅という強い販売チャネルの集積を活かして送客、購買まで踏み込んだソリューションの提供が必要だと思っています。交通広告のリーセンシー効果を高め、より広告の価値向上に努めていくべきだと感じました。
——今後は、さらに「送客」に力を入れていくということですね。
森川 はい。名古屋駅へのデジタルサイネージの設置・普及は再開発が続く名古屋駅地区発展の一歩だと捉えています。これからはコンビニエンスストアに加えて、ドラッグストアや駅ナカなど、送客先の拡大を考えています。
川合 今は全国的にも駅チカや駅ナカでの消費が盛り上がっており、駅あるいは周辺販売チャネルとの連動効果をまだまだ高められると思います。私たちの役割は、駅や鉄道での広告ソリューションを提供して、消費者と企業のコミュニケーションをつくることです。駅の持つ「認知から購買までの距離が短い」という特性を活かし、スマートフォンと連動した広告展開による実店舗への送客には今後も力を入れていきます。
——名古屋の活性化にもつながりそうですね。
佐藤 そうですね、駅を中心としたエリアの消費拡大は効果的です。
森川 最近は、地方創生という言葉をよく聞きます。地域から元気になっていく流れが生まれてきているため、名古屋のような大きな街が先陣を切っていけるといいですよね。
新しい取り組みを行うのは東京か大阪という風潮を、名古屋から打破していきたいと思っています。
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