【前回のコラム】「編集者として、人と人との狭間を埋めたい(3)」はこちら
若手編集者として、拙い経験のなかから「編集者の仕事」について書かせていただいている本連載。最後は、少し抽象的になってしまうかもしれませんが、編集者として日々心がけていることをお伝えしていきます。
前回までのコラムでも書いてきたように、情報やエンタテインメントが氾濫し、人々が様々な経路でそれらを享受する今、単にコンテンツをつくるだけでは伝えたいことを届けることはできません。編集者は、本や雑誌をつくる担当職ではなく、企画を生み、媒介方法を考え、コンテンツをつくり、潜在的な読者に届ける、その道筋をつくってマネタイズもしていく人だと思っています。その過程で、私が意識している(いきたい)ことを考えてみました。
「やりたい」を「やるべき」ことに
企画を考え形にしていく上で意識しているのは、まず自分が1人の読者として、今どんなことを求めているのか、その問題意識を掘り下げていくことです。ただ自分のやりたいことを追求するだけでは、単なる自己満足で終わってしまいビジネスとして成り立ちません。だからこそ、自分の問題意識と時代や世の中、その媒体の色などをすり合わせて、「やりたい」を「やるべき」ことにしていく必要があると思います。
例えば、U25 Survival Manual Series であれば、23歳のときに「これからの働き方」について、自分の悩みを友人や周りの人たちと共有していたところから企画は始まりました。25歳どころか27歳を過ぎた今、自分の周りで子どもを産む友人なども増えてきて、最近は保育や社会問題としての「子どもの貧困」に興味があり、講談社「現代ビジネス」でNPO3keys代表の森山誉恵さんの「いつか親になるために」という連載を担当していたり、私自身も取材して記事を書いたりしています。
編集者によって企画の立て方や進め方もそれぞれだと思いますが、私は自分起点で等身大の目線で編集をしていくことが多いです。その分、独りよがりにならないよう、アイデアの段階でできるだけ色んな立場の友人や先輩など周りの人に話して意見をもらうようにしています。共感が得られるのか得られないのか、他にどんな視点があるのかなどを確認していく作業です。出発点は自分であるけれど、ゴールに近いところではより多くの人に共有できるよう工夫をしていくことも編集の仕事だと思っています。
逆に、引き継いだり任されたりした「やるべき」企画に関しては、自分の視点を入れて「やりたい」ものにしていきます。どんな企画でも考え抜いていけば自分ごとになっていくし、自分ごとになると、企画そのもの(編集という仕事)がとても楽しいものになります。私の場合は、基本的に自分が知らない未知のものに対しても好奇心が湧きますし、その企画が自分ごとになるのは、筆者のことを好きになってしまうという人間への興味にあるような気もします。