CMづくりは「1%でも面白くしよう」と最後まで粘れるかで決まる

CMは「音が映像を規定する」

権八:あとは、以前にも出ていただいた山崎隆明さん(ワトソン・クリック)がよく歌モノをされていましたけど、結構似た感じのマイナーコードの曲なんですよね。「ほっとぺっぱーぱっぴぷっぺぱっぴ♪」みたいな。チキンラーメンの芦田愛菜ちゃんのCMも歌モノありましたね。「てっとてったてってれ♪」という。何かそういう、山崎さんの黄金の勝ちパターン、ちょっと哀愁あるメロディで、子どもが真似する感じというか。

澤本:言いやすいんだよね、たぶん。

権八:僕もつい忘れちゃうんだけど、「CMは音だ。映像ではない」と。「音が映像を規定するんだ」みたいな。

澤本:実際、僕もそうだと思うよ。でも、僕らが費やしている時間は、映像のほうが9ぐらいで、音は1あるかないかじゃない。もっと音に気を遣っていたら目立つと思うんだよね。佐藤雅彦さんは音だった。音で色々なものを規定したから。あのぐらいに音をちゃんとつくっていると、デキはよくなると思うんだよね。ただ、雅彦さんのは音で編集してる、全部。

権八:「音ありき」で、画の繋ぎよりも音の繋ぎで編集していくというやり方でしたよね。僕は最後の弟子というか、丁稚というか、アレだったのでビックリしました。

澤本:どうだった?

権八:素晴らしい・・・伝説の佐藤雅彦ですから。「バザールでござーる」の最後のほうですね。当時、電通入社2年目のCD局の若手は毎年、TOPICSという雅彦さんの事務所に丁稚で行かされて、手伝うという。噂通り、何時間も打ち合わせをするし、休憩してちょっと寝たりするし、面白いんですけどね。あるとき、「権八くんは彼女いるんですか?」と聞かれて、「一応まぁ、はい」って言ったら、「不潔ですね」って。

一同:

権八:それは冗談なのかもしれないけど、「慶應大学の佐藤雅彦ゼミは男女交際禁止です!」って、ドヤ顔されましたけどね(笑)。

澤本:禁止っていう状態で男女がいるから変に燃えたりするんじゃない?

中村:少年サンデー的な考え方ですか(笑)。

権八:そうかもしれない。だいたいSFC(慶應大学湘南藤沢キャンパス)では学生が夜中も研究室に残って、研究をやっていたから。「男女交際禁止」って言われるなかで、みんな残って・・・もう大変ですよ(笑)。

澤本:そういう変な制約をつくると逆にね。

権八:そうそう。でも、面白かったですけどね、雅彦さんの近くで見てると。ちょっと下っぽいネタとか入れるとこうニヤッとするんだけどね、何となく流すという。

澤本:つまり、権八が下ネタを書いて雅彦さんに出すと。その瞬間はニヤッとするけど、スーッと流れていくと。

権八:そう、ただスーッと流れていくんだけど、その横で内野真澄さんが爆笑してるっていう。内野さんは結構、面白がってくれたんですよ。内野さんもまた天才の・・・。

澤本:電通で雅彦さんと一緒にやってらっしゃった。

中村:「バザールでござーる~♪」とか、「モルツーモルツー♪」とか、ああいうのって最初に企画を提案するじゃないですか。そのときには、もう音ができているんですかね?

澤本:できてるでしょ、基本的に。ご自分で歌われるんじゃないですかね。

権八:プレゼンの段階で、デモとかもできていて。でも、全部凄いですよね。「スコーンスコーン湖池屋スコーン♪」もそうだし、澤本さんが15秒きっかりで記憶しているというポリンキーもね。

次ページ 「1%でも面白くしようと最後まで粘ることが大切」へ続く

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