【前回のコラム】「広告クリエイターを、スポーツクリエイターへ。」はこちら
「夜爪を切ると、親の死に目に会えない。」
こちらは日本の言い伝えですが、
信じている人も少なからずいるのではないでしょうか。
私の知り合いの女性も
夜パチパチと爪を切っていたところ、
当時の彼氏が血相を変えてやってきて
親を大事にしないヤツとは別れる。
とドスのきいた声で言ってきたそうです。
なぜこのような言い伝えがあるのか。
その理由を教えてくれた方がいました。
オキタリュウイチさんという、天才です。
この方は「ヘブンズパスポート」という
「キレる17歳」を消す為の仕組みを考えたり、
「生きテク」というサイトを通じて
約2万人の自殺を未然に防いだり、
売上が低迷していた京都のお米屋さんを
劇的に再建させたりしている
恐るべきクリエーティブ・ディレクターなのですが、
ご興味ある方はこちらのリンクを見て頂くとして、
今回は夜爪の話です。はい、今勝手に略しました。
オキタさん曰くこの話は
何百年も前に生まれたそうです。
当時ほとんどの日本人が農業で生活を営んでいました。
手が命です。
そんな時代、暗い行灯のもとで爪を切ったら、
手を切ってしまうこともあります。
すると翌日の農作業で傷口から雑菌が入り、
最悪の場合死に至ることもあったそうです。
これをそのまま誰かに伝えようとすると、
「夜爪を切ったら暗くて手を切る恐れがあるし切ったら農作業中に傷口から雑菌が入って病気になって死んじゃうこともあるから止めておきなよ」
と、どうしても冗長になります。
昔の日本人の賢いところが、
この話をキャッチーに簡略化したことです。
「夜爪を切ると、親の死に目に会えないよ。」
凄いシャープさです。
キャッチコピーのようです。
明確に言うと「自分が先に死ぬから、親の死に目に会えないよ」
ですがそんな事はどうでもよくなってしまうくらい
インパクトの強い言葉です。
オキタリュウイチさんからこの話を聞いて、
僕が思ったことがあります。
この言い伝えが、どうして何百年も伝わって来たか。
それは、このアイデアが、
複数課題を一挙に解決しているからです。
夜爪を切らないことにより、
不毛な死を減らすという課題解決。
加えて、夜爪を切るたびに言い伝えを思い出し、
「もっと親を大切にしておこう」
という気持ちが生まれる。
親を大事にしようリマインダーとして機能しているのです。
半端ないアイデアです。名もなきクリエイター、カッコよすぎ。
当時日本の各所に関所があり、
いまで言うパスポートのようなもの(許可)
がないと隣の県に行けなかったのですが、
それでもこの言い伝えが地域を越えて
日本中に根づいたのも凄まじいことです。
複数課題を解決するアイデアは、
太く、強く、広く、生き続ける。
そう痛感した僕は、
スポーツを創る際も、
「複数課題を解決するスポーツか?」
と常に問うようにしています。