まとめサイトで海外にも拡散、台湾から観光客もやってきた「文の里商店街ポスター展」by日下慶太(電通関西支社)

大阪の新世界市場に始まり、文の里商店街、伊丹西台、そして宮城県女川へと広がっていった「商店街ポスター展」。月刊『広報会議』では2015年3月号から全5回にわたり、仕掛人である日下慶太さん(電通関西支社)によるコラムを掲載してきました。アドタイでは、『広報会議』本誌では掲載できなかった部分など含め、改めて加筆した完全版として全5回にわたりお届けします(隔週予定)

第1回「新世界市場」の回はこちら

今回は文の里商店街ポスター展(2013年8月28日~12月31日)について。こちらの方が話題になったので知っている人も多いだろう。「商店街ポスター展」は文の里から始まったと思っている人もなかなか多い。

「文の里商店街ポスター展」は前回紹介した第1回の「新世界市場ポスター展」から順当に進化した。大きく異なる点は2つ。まずは、大阪商工会議所という組織とのタッグ。次に、パブリシティの活用である。

商工会議所とタッグを組むも、アウェイからのスタート

文の里商店街でポスター展を始めるきっかけとなったのは大阪商工会議所で商店街振興を担当する堤成光さんの存在だ。次のポスター展をどこかでやれたらなあと思いつつも、他に商店街とのつながりがあるわけではないぼくのところに、堤さんがやってきた。

「大阪商工会議所の『商店街フォーラム』でこの事例を話してくれませんか」と依頼されたのだ。

商店街フォーラムとは日本全国の商店街のおもしろい取り組みを一同に集めて仕掛人が講演するという、全国の商店街関係者が注目するイベントである。商店街の品々を100円均一で売る「100円商店街」。商店主たちがプロならではの専門知識や情報を無料で受講者(お客)に伝えて来客につなげる「まちゼミ」など、様々な事例が紹介されている。

今では全国規模になったイベントはすべてここから始まっている。

2013年3月25日、ぼくも商店街ポスター展について講演をした。「もし興味がある方はアンケートに開催希望と書いてください」と言って最後を締めると、およそ20の商店街が名乗りをあげた。

「これだけ希望があるのならポスター展を一緒にやりましょうか」と大阪商工会議所とともにやることになるのであった。

大阪商工会議所の主催する「商店街・賑わいプロジェクト」の一環として行うことになった。手のあがった商店街とかつ大阪商工会議所からもらったおすすめの商店街からぼくはぐるぐると大阪市内の商店街を回った。その数20ぐらいだろうか、その中から文の里商店街を開催地とすることにした。理由は以下の通り。

(1)店舗数が50ほどと適度であった。

店舗数があまりに多いと制作者も足りない。50ぐらいが限界であった。コピーライターとデザイナーが2人1組となって1チーム、1〜2店舗を担当した。

(2)商店街に活気がまだある。

いくつかの商店街はもうポスターを制作しても仕方がないのではないかと思うほどに、寂れていた。ここは7割ほどが営業していた。まだチャンスはある。

(3)激変する周辺環境

ここ大阪市阿倍野区は大型商業施設が相次いで完成し、さらに、商店街のすぐ近くにスーパーが立て続けに2軒もできた。客の流れが激変する中、ポスター展をすることは、少しでも傷を浅いままにできるのではないかと考えた。

(4)メディアの取り上げやすさ

(3)のような周辺状況は、メディアは物語にしやすい。さらに、阿倍野区は再開発もあってメディアの注目スポットであった。なので、ここでやることはメディア取材が多くなり、よりPR効果を持つのではないかと考えた。

以上の点から第2回は文の里商店街を選び、電通関西支社から29チーム58人が参加した。ただ、今回はぼくの苦労が絶えなかった。前回の新世界市場は「セルフ」祭のこともあって商店街の人たちはみな顔見知りである。

しかし、文の里は完全に知らない人ばかり、ヒゲで長髪の怪しい男(=筆者)など信頼してくれるわけもなく、完全にアウェイからのスタートであった。

商店街の幹部には説明したのだが「ポスター展、それ何でっか?おもろいポスターつくるってなんですの?」とそれぞれの店にはまったく伝わっていない。これはダメだと真夏のアーケードの中、MacBookを持って映像をみせながら一店舗ずつ説明していった。

さらには、お店をより知らなければと1店舗ずつ取材をした。写真と文章で各店舗A4のシート1枚にまとめ、オリエンシートを作成した。この目的はまず、参加者がどの店を担当したいか、どう作ればよいかをより分かりやすくすること。次の目的は、店と会話をしてこちらを信用してもらうこと。

こうして、制作者たちがより制作しやすい環境を整えていった。

次ページ 「報道機関22社を誘致、密着取材も入りパブリシティ拡大」へ続く

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