東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は1日、都内で行った会見で、佐野氏がデザインしたエンブレムの使用を中止することを発表。あわせて、新たなデザインを選び直すことも明らかにした。同日行われた、遠藤利明五輪担当相や森喜朗元首相、舛添要一都知事ら6人が出席する関係者間の調整会議により決定した。
取り下げ「盗作訴訟問題とは無関係」
リエージュ劇場ロゴ制作者のオリビエ・ドビ氏による、IOC(国際オリンピック委員会)に対するエンブレムの使用差し止め訴訟に端を発した、一連の騒動。組織委はこれまで、「両者はまったく異なるもので、佐野氏のデザイン案にはオリジナリティが認められる」とし、取り下げは行わず、現行のデザインを継続して使用する姿勢を貫いてきた。
今回の取り下げ決定にあたっても、盗作の疑惑を改めて否定。「リエージュ劇場のロゴとは起点となるコンセプトが異なり、細部を見れば『似ている』ところもあるが、それ以上に異なる点も多い。佐野氏本人や、審査委員会の判断を鑑み、今でも盗作ではないと確信している。取り下げは、こうした一連の疑惑や訴訟問題とは無関係。訴訟問題にも関わる事項であり、これは改めて強調したい」と1日の会見に臨んだ組織委の武藤敏郎事務局長は話す。
組織委として疑惑を否定する姿勢は、8月28日の「佐野氏が当初応募した原案デザインの公開」という形でも示された。原案を国内での調査にかけたのち、IOC・国際パラリンピック協会(IPC)・組織委の共同で国際商標調査を実施したところ、類似する商標が複数確認されたことから、7月24日発表の最終案に至るまでに、2回の修正を佐野氏に依頼したことも明らかにされた。
組織委は「エンブレムの募集要領には、デザイン案の選出後に修正を行う可能性についても明記されている。審査の結果1位だった佐野氏の案と、2位の案の間には圧倒的な差があったことから、他デザインとの類似が指摘されても2位の案に差し替えることはせず、1位の案に微調整を加える形で問題をクリアすることにした」と手続き上の問題はなかったとの見解を示した。
その上で、今回の取り下げの理由については、原案者である佐野氏からの要望があったことを明かした。武藤氏によると、佐野氏は「デザイナーとして五輪に関わるのが夢だった。盗作疑惑は事実無根であり、デザインが模倣であることを理由とする取り下げには応じられない。しかし、提案したエンブレムはいまや一般国民から受け入れられず、五輪のイメージに悪影響を及ぼすことが考えられる。エンブレムの所有権は、当選時点で組織委員会にあるため難しいかもしれないが、原案者として取り下げを要望したい」との意思を表明。佐野氏本人や家族に、昼夜を問わず誹謗中傷が続いていることにも触れた。