※本記事は、雑誌「環境会議2015年秋号」からの転載です。特集は「生命、生活、産業の源 2025年の水問題を考える」になります。
中国山地のほぼ中央に位置する鳥取県日南町。西は島根、南は岡山、南西部は広島と3県に接し、総面積はおよそ3万4087ha。その約9割に当たる3万377haを森林が占める。しかし、国産材需要や材価の低迷、林業従事者の減少、高齢化などに起因して林業生産活動が全般にわたって停滞し、全国的に間伐や保育が適期に実施されていない森林が多いことも現実だ。
今年、2期6年目となる増原聡日南町長は、就任当時から林業振興を施政方針のひとつに挙げ、森林整備の促進と木材搬出量の増大を図る「日南の豊かな森林の恵みを活かしたまちづくり計画」を進めるなど、地方創生につながるプランを実行してきた。
「持続的林業産地の形成を行うため、新規に皆伐・新植の奨励補助を行うとともに、町有林においては皆伐・新植モデルと分収造林地の再契約を積極的に行いたい。農林業研修生の受入れにも引き続き力を入れる」と話す。
さらに、鳥取県では県内の森林フィールドに企業やNPO民間団体の環境貢献、社会貢献活動の取り組みを呼び込む「とっとり共生の森」を制度化している。これは、伐採跡地など植栽が可能な森林や、間伐などの保育管理が必要な森林を提供し、企業などが主体的に植栽樹種を選定し、保育・管理するもの。参画企業にとっては環境貢献やCSR活動の実践的な場ともなり、林業事業体にとっては雇用創出や地域の活性化につながる。
日南町では日本通運が2009年からこの制度に賛同し、年に2回のペースで従業員とその家族が森林組合などの協力を得て、下草刈りや間伐、植栽などを実施している。今年の夏の活動(7月4日〜5日)では全国から約40名が参加し、松ヶ峠地区の約3.7haの森林で保全活動を行った。夜は場所を移してヒメボタルを観賞するなど、地域交流やレクリエーションの要素も盛り込み、子供たちは日南町の自然の中で森林の大切さや生物多様性の重要性を学ぶ場にもなった。
増原町長は「地球温暖化防止や環境教育への企業の取組みを具体化できる最適な場だと思っています。町では体験型社員研修などのニーズに応じた企画もサポートしているので、今後もさらなる参画を募り、森を次の世代へつなげたい」と制度の推進に意欲的だ。