グレーゾーンを制作現場からなくすためにプロジェクトマネジメントに必要なこと

デジタル分野の新しいソリューションや考え方が生まれ、統合キャンペーンやデジタルキャンペーンなどのより複雑度が高いプロジェクトが増えてきた。職種の違うメンバーが集まり、一つの物事を進めていくには、リーダーの進行管理能力だけでなく、チームを束ねてブーストしていく推進力が問われる。そこで、こうしたプロジェクトマネジメントを実行する際のポイントについて、宣伝会議が11月9日に開講する「プロジェクトマネジメント実践講座」の講師であるロフトワーク シニアクリエイティブディレクター 重松 佑氏に聞いた。

ロフトワーク シニアクリエイティブディレクター 重松 佑 氏

「PMBOK(Project Management Body of Knowledge)って一言で言うと何ですか?」とディレクターやデザイナー、クライアントに聞かれることがあります。ここでは、「PMBOKとは10の知識エリアに沿ってプロジェクトを整理し…」というような話を期待されているのではありません。実際にプロジェクトを担当しているディレクターが忙しい制作現場で、どのようにPMBOKを使っているのか、ということを意味しています。そのようなとき、私はいつも「一言で言えば、PMBOKとはグレーゾーンをなくすために使います」と答えています。それでは、そのグレーゾーンをなくすとはどういうことなのか。「朝、たまごを焼く」という体験を例に説明します。

PMBOK 10の知識エリアのおさらい

PMBOKとは現在世界標準となっている、プロジェクトマネジメントの知識体系のことです。「10の知識エリア」とは、いわばプロジェクト全体の航海図です。

1.プロジェクト統合マネジメント
全体を捉えるための作業エリアです。プロジェクト全体を俯瞰し全体最適を図るプロジェクトの要の部分です。

2.プロジェクト・スコープ・マネジメント
「スコープ」とは、そのプロジェクトにおけるすべての成果物のことで、「作業範囲」と訳されることもあります。

3.プロジェクト・タイム・マネジメント
スケジュール作成・管理のエリアです。

4.プロジェクト・コスト・マネジメント
見積りなど、コストに関するエリアです。

5.プロジェクト品質マネジメント
成果物の完成度を設定し、それを達成するための手法を計画するエリアです。

6.プロジェクト人的資源マネジメント
プロジェクト・チームをどのような体制にするかを決めるエリアです。

7.プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント
プロジェクト・チーム内でどうやってコミュニケーションをとるのかを決めるエリアです。

8.プロジェクト・リスク・マネジメント
作業を進める際に、どのようなリスクがあるのかを事前に洗い出し、その対応方法を考えておくエリアです。

9.プロジェクト調達マネジメント
外部業者への発注や契約にかかわるエリアです。

10.プロジェクトステークホルダーマネジメント
ステークホルダーとの関わり方をマネジメントするエリアです。

「10の知識エリア」で、つくるモノの輪郭をはっきりさせる

「朝、たまごを焼いてください」と頼まれたとします。依頼者は家族でも友人でも恋人でも誰でも構いません。たまごを焼くことを依頼されて、あなたが最初に行うことは何でしょうか。

「どんな焼き方がいいか?」「いつまでに出来ていればいいか?」「どのくらい食べるか?」など、相手に確認するのではないでしょうか。その際に考えなければいけないことを網羅するための指針がPMBOKの10の知識エリアです。例えば「どんな道具を使うのか(調達マネジメント)」「誰か作業を分担できるのか(人的資源マネジメント)」「焼き加減を失敗した場合どうするのか(リスクマネジメント)」など。PMBOKのフレームワークを使うことで、全体を抜け漏れなく確認していきます。言わなくても分かるだろうと思い込むのではなく、細いことだけど念のため確認しておくという姿勢でプロジェクトに取り組むことによって、つくるモノの輪郭をよりはっきりとさせていきます。

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