「俺は情熱大陸に出たい」クワガタおじさんと出会う
先日、ジモコロの取材で静岡に行ったのですが、車を走らせていたら「たけのこ」「固いもも」「クワガタ」みたいな看板が道路上にあったんです。取材先で、「あの看板なんなんですか?」って聞いてみたら、「地元ではけっこう有名な人で、クワガタとたけのこで過去にフェラーリを2台買ったことがあるおじさんなんですよ」って。「え…? は!?」みたいな。
気になって帰り道に寄ってみたら、タンクトップ姿で180センチメートル以上の精悍な顔つきのおじさんがいて。取材とか言わずに、「なんなんですか、ここ」って聞いたら、「クワガタで何千万ってお金を稼いだ」とか、「本業はたけのこ農家の3代目だ」、「俺は情熱大陸に出たい」とかって話をノンストップで1時間半してくれたんです。めちゃくちゃ話がおもしろいんで、話し終わったあとに記事にして良いかを聞いて、「【伝説】クワガタとタケノコで大稼ぎ! 謎の農家「風岡直宏」はなぜフェラーリを買えたのか?」という記事を8月に公開しました。
結果として、ジモコロらしい記事として話題になりましたね。こういった東京には絶対落ちてないような地方の一次情報、おもしろい人とか仕事を記事にできれば、ほかのメディアには出せないカラーになると思っています。
——テレビ番組に近い取材の仕方ですね。
『探偵!ナイトスクープ』とか、『ザ!鉄腕!DASH!!』のDASH村みたいな長く愛される番組が理想ですね。ジモコロは「時代の流行とは全然関係のない普遍的なおもしろさ」をつくれるんじゃないかなと思っていて。
さっき言った、たけのことクワガタでフェラーリを買ったおじさんも、地元の新聞に取り上げられたことのある方なんです。「静岡で有名なたけのこを売っている○○さん、今年の売上目標は○○万円」みたいな。ただ、いわゆる新聞記事的な書き方をしても魅力が伝わらないんですよ、そういう人って。むしろ、ちょっといじわるな目線で個性を引き出したり、記事の構成でおもしろくしないといけない。あくまで「人」がおもしろいので。
僕がやっているのは写真と文章の工夫。たとえばアイコン・セリフ・アイコン・セリフって流し方をするとか。インタビューというよりも、会話を読んでるような感覚がスマホ時代の読者にとって負担が少ないんです。そこに加えて、動画やgifで動くものを入れて思わず目が留まるものをつくろうとか。そういう手間暇を惜しまないようにしています。
——記事を読んでいると愛情をもって書かれているのが伝わってきます。
自分が心からおもしろい!と思ったものなので、100%に近い状態、もしくは120%ぐらいで届けないともったいないというか、取材対象者に申し訳ないじゃないですか。取材する側も、される側も、そしてその記事を読んだ人も得する三方良しな関係性が理想ですね。