繁盛店と不振店の違いはどこにある?

ブックオフコーポレーション取締役相談役の橋本真由美氏は、第一号店のオープニングスタッフとしてパート採用された後、売上をあげるために次々とアイデアを出し、店長、常務を経て社長にまでのぼりつめた、まさに現場を知り尽くしたトップ。
そんな橋本氏が考える現場力とは。また、現場を育てるノウハウとは。

—貴社にとっての現場力とは?

ブックオフコーポレーション 取締役相談役 橋本真由美氏

当社は人の力がすべてですから、社員やスタッフのレベルの高さが現場力に直結します。レベルと言っても、いい学校を出ているとか、頭がいいという意味ではありません。レベルが高い人とは、お店のことを「自分のこと」として捉えることができる人です。例えば、自分のお財布から5000円が無くなったら、どこに行ったのだろうと必死で探すはずです。

でも、お店のレジを締めた時に現金差異が出たら財布の時と同じように必死になれるでしょうか。会社の収益が落ちた時に「まあ、しかたないか」で片づけていないでしょうか。そこを自分のお財布の時と同じようにあきらめない人が、店のことを自分のことにできる「レベルの高い人」です。私はこれを「自分ごと経営」と言っています。自分ごとにできる人材が集まる店はすごく強い現場になります。

—そうした現場力を磨くために、どのようなことをされていますか?

当社は、従業員が最大の財産であり、ブックオフグループの競争力の源泉であると考えています。そのため当社では、パートアルバイトスタッフと社員を「人財」と呼んでおり、人財育成に力を入れています。

業界のシェア獲得に注力していた創業時は、人財育成をする余裕はありませんでしたから、社員は何のノウハウも教えられぬまま、いきなり現場に出ていました。しかし、そうしたやり方を続けていては人が育ちませんので、1992年に人財育成システム「キャリアパスプラン」を導入しました。

キャリアパスプランは、何をどんな風にがんばればいいのか、どのレベルまでがんばればどういうキャリアを得ることができるのかを明確に示したツールです。

例えば、ある一定レベルに到達したパートやアルバイトは社員登用に挑戦できます。年間100人ぐらい挑戦して約3割から4割の方が社員として採用されているんですよ。

新入社員には入社時からマンツーマンで育成担当者をつけます。育成担当者は、仕事の仕方はもちろん、社会人としての心構えから、ひとり暮らしに役立つ情報まで、親が子どもに教えるように、一つひとつ教えて一人前の店長に育てていきます。担当していた新入社員が店長として巣立った後も、育成担当者はずっと気にかけているもので、いい評判を聞けば嬉しくなりますし、うまくいっていないという噂を聞くとすごく心配します。巣立った社員の側も、悩みごとがあれば育成担当者に相談しにやってきます。まさに「親子の制度」なんです。この方法を導入してから人財育成はうまくいくようになりました。

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