本記事は『広報会議』1月号の連載「オフィスイノベーション」に掲載されたものです。
かゆみ止め用外用剤「ムヒ」で知られる池田模範堂は、研究棟の老朽化に伴い、2014年に本社に隣接した敷地に新たな研究開発棟「MUHI SKINRESEARCH CENTER」を建設した。本社は富山駅から約15キロメートル、立山連峰を望む富山県上市町にある。
「研究開発型の企業であり続けるために、このプロジェクトは3つのテーマを掲げて臨みました」と語るのは研究所長付特命担当の中村光延氏。「コミュニケーションを取りやすくすること」「想像力を最大限に発揮できること」「最新の研究ができること」だ。
特に「コミュニケーション」に関しては力を入れた。というのも、研究職の社員はときに実験室にこもりっきりになり、まったく人に会わず話もしないことすらある。「スキップフロア」や「パプリックラウンジ」を設け、人と情報が常に流れるよう意識した結果、社員たちからは「一体感が出た」という感想も聞かれるようになった。
部屋ごとに壁の色を変え、視覚を刺激しつつ心を落ち着かせる空間にした点も新しく、想像力を最大限に発揮させる効果がある。オフィスフロアでは小鳥のさえずりが流れ、リラックス効果を演出しているのも印象的。
スキップフロアの階段の数が各階で違ったり、左右非対称なつくりだったりと、目にするものが単調にならないようにすることで「常に新しい視点でものを見てほしい」という想いが込められている。さらに気分転換したいときなどは、雄大な立山連峰の眺めを独り占めできる「空想テラス」もある。
「人工気象室」のような研究設備も充実させ、最も効率的に実験を進めることができるようレイアウトにも配慮した。電気、水道などのインフラや給気・換気などは、実験や機器に合わせて細かく設計することで、商品開発のスピードアップを後押ししている。中村氏は「今後は主力商品である夏の虫さされ薬だけではなく、冬の乾燥肌対策商品の開発にも力を入れていきたい」と話している。