オランダのデザイン界を代表する Experimental Jetset 、日本の90年代ポップカルチャーに受けた影響を語る

「ホイットニー美術館」のCIなどの仕事で知られ、オランダのグラフィック界を代表するデザインユニットExperimental Jetset (エクスペリメンタル・ジェットセット)。彼らは、これまで日本のデザインやポップカルチャーにも多大な影響を受けてきたという。月刊『ブレーン』では彼らに来日インタビューを実施。本記事では『ブレーン』誌面に収録できなかった、Experimental Jetsetとジャパンカルチャーの知られざる接点を紹介する。

Experimental Jetset 左から、アーウィン・ブリンカーズ、マリエケ・ストーク、ダニー・ヴァン・デン・ダンゲン。

最近の代表作のひとつ、ホイットニー美術館CI(2013)

マッシュホールディングスCI(2015)

月刊ブレーン3月号の表紙ビジュアルもExperimental Jetset によるもの。ブレーンデジタル版に表紙デザインについてのインタビューを掲載。

ピチカート・ファイブとコーネリアスのジャケットに鳥肌が立った

Experimental Jetsetを設立したのは1997年のことですが、その頃から私たちは日本のグラフィックデザインやポップカルチャーに多大な影響を受けてきました。特に90年代半ばは、ピチカート・ファイブやコーネリアス、ボアダムズなどのレコードジャケットに感動したのを覚えています。

同時期に、影響を受けた日本の本も何冊かあります。ヤマタカEYEの「NANOO」、タイクーングラフィックスの「G-Men: Design or Die」、ヒロミックスの「Girls Blue」、グルーヴィジョンズの「Mr. Freedom: Creeping Freedomism」など。

左から、
・ヤマタカEYE「NANOO」(リトル・モア 1996年)
・タイクーングラフィックス「G-Men: Design or Die」(リトル・モア 1996年)
・ヒロミックス「Girls Blue」(ロッキングオン 1996年)

90年代半ばと言えば『Barfout!』『Tokion』『Beikoku-Ongaku』などの雑誌も好きでした。特に『アイデア』のファンで、この雑誌を通して、横尾忠則や田名網敬一、亀倉雄策などの日本人のデザイナーについて知りました。

90年代発行の『Barfout!』『Tokion』『Beikoku-Ongaku』『アイデア』

他に忘れてはならないのが、日本のモダニスト・構造主義の建築家たち。中でも、特にメタボリストたち。私たちの仕事は、彼らから大きな影響を受けています。

最近のグラフィックデザイナーで言えば、古平正義が好きです。2014年のヴェネチア・ビエンナーレで日本館のためにつくった作品が印象的でした。この時の日本の展示のテーマは日本の60~70年代の建築で、私たちが関心のあるメタボリズム建築にも触れられるものでしたから。彼の制作したカタログやニュースペーパー、パビリオン内のサインがすばらしいと思いました。

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ヴェネチア・ビエンナーレ展示ポスター
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同カタログ

でも結局のところ、一番影響を受けたのは、日本のバンド(とレコードジャケット)だと思います。私物のレコードコレクションには、日本のバンド(多種多様な)のアルバムが何枚もあります。例えば、YMO、プラスチックス、坂本龍一、ピチカート・ファイブ、コーネリアス、ボアダムズ、OOIOO、Buffalo Daughter、Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her、東京スカパラダイスオーケストラ、Fantastic Plastic Machine、ルインズ、Melt-Banana、少年ナイフ、BORIS、S.O.B、Doom、Merzbow、嶺川貴子(「Fantastic Cat」は長年一番好きな曲かもしれません!)、ギターウルフ、Mad3、Acid Mothers Templeなど…、挙げだすと限りがありません(彼らのライブにもよく足を運んでいます)。

今でも、コーネリアスの「Fantasma」やピチカート・ファイブの「フリーダムのピチカート・ファイブ」、Seagull Screaming Kiss Her Kiss Herの「17」などのレコードジャケットを見ると、鳥肌が立ちます。あまりにも完璧で!

コーネリアス「Fantasma」(1997)

ピチカート・ファイブの「フリーダムのピチカート・ファイブ」(1996)

Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her「17」(1997)

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