1895年創業
松竹
松竹グループは映像事業、演劇事業、不動産・その他事業の3つを主体とする、総合エンターテインメント企業グループ。「日本文化の伝統を継承、発展させ、世界 文化に貢献する。時代のニーズをとらえ、 あらゆる世代に豊かで多様なコンテンツ をお届けする」をミッションとする。
2015年、松竹は明治28年の創業から120周年を迎えました。今回は1年間を通じて取り組まれた120周年記念事業を中心的に進めてきた、経営企画部 広報室の村上具子室長にお話をうかがいました。
「周年」はゴールではない 若手が語る未来に社長も涙
方向性を大胆に絞り込む
松竹は2013年の歌舞伎座新開場の成功などもあり、120周年を迎えた2015年も非常に業績好調。周年を機に大きな変革を施す必要がある状況にはありませんでした。また、110周年記念の際に対外向けにインパクトのある企画を実施していたこともあり、120周年としてのコンセプトを定めにくい状況にありました。
その状況下、社長からの要望を踏まえ「外向けに派手な企画を打ち出すのではなく、後につながること、未来に続ていくような施策にする」という方向性を打ち出したことが、その後のプロジェクトをスムーズに進めるポイントとなりました。
4つの事業本部から若手・中堅を2人ずつ集めたプロジェクトチームが機能したのも、この最初の方向づけが明確だったことが要因でしょう。その方向性のもと、さらに120周年のテーマを「チームビルディング」「ブランディング」「ビジョン」に絞り込んだことで、周年の各施策の選定や推進に有効に寄与しました。
一般に長寿企業の周年事業は何でも盛り込んでしまい、かえって成果が出ないという傾向があります。松竹のように思い切ってテーマを絞り込むことが重要です。
非日常の空間を活用した施策
松竹による120周年事業の施策の特徴は、「社員食堂」「運動会」「全社員パーティー」「若手社員が自社の未来を語り合うワークショップ」など、世代や部門・グループ会社の枠を越え、直接交流できる場をつくったという点にあります。
日常の業務の枠組みでは生まれにくい「つながり」やコミュニケーションを、ある意味強制的に、しかしポジティブに促す絶好の機会が周年記念です。
その中でも「若手社員向けのワークショップ」に注目したいと思います。長寿企業、大手企業になればなるほど業務は細分化され、会社全体にセクショナリズムが蔓延している傾向があります。
そんな状況で入社した若手社員が、会社全体のことを考えたり、語り合ったりすることは日常業務の中ではまずありません。非日常の周年事業だからこそ、こういった若手社員に機会を与え、「2030年の松竹の未来を考える」というテーマで語り合う場を持つことは非常に効果的です。
また、この施策が生まれた背景も秀逸です。企画は当初は実施を想定されておらず、周年事業を進めるうちに、「社歴の短い若手社員の参加率が低い」という課題に事務局が気づき、対策として講じたのがこのワークショップ。
周年事業は、周年イヤーの1年間という時間軸を使って施策を展開できます。1年の時間軸の中では課題感や組織の状態も刻々と変化します。その変化を機敏に捉えながら適切な対策を施すことは、周年事業を形式的なものではなく、課題解決につながる事業にする重要な観点です。