日本型広告ビジネスは世界のマーケットで戦える?電通 グローバルメディア&デジタル室長に聞く

2016年にアジア初として東京で開催される「Advertising Week Asia 2016」を記念して、広告業界のタブーに挑戦する特別コラムを実施。同イベントのアドバイザーにAdverTimes編集部からの質問に答えてもらいました。第7回は、電通 グローバル・ビジネス・センター グローバルメディア&デジタル室長/Dentsu media COO 頼 英夫 氏に「日本型広告ビジネスは、世界のマーケットで戦えますか?」と聞きました。

電通 グローバル・ビジネス・センター グローバルメディア&デジタル室長/Dentsu media COO 頼 英夫 氏
1987年電通に入社。新聞局に配属後2000年から2年間、電通アメリカに出向。2002年に日本に帰国し、当時資本関係があったピュブリシス・グループとの提携業務に従事。メディアコンテンツ計画局、経営企画局などを経て2010年に電通ホールディングスUSA/電通ネットワークウェストのエグゼクティブ・バイス・プレジデントとして再びアメリカに赴任。イージスメディアの買収や電通のグローバルビジネス事業に従事し、2013年に帰国し現職。アジアを中心に展開するメディアエージェンシー事業のCOOを務める。

■質問
日本型広告ビジネスは、世界のマーケットで戦えますか?

■回答
日本型広告ビジネスは、アジア(世界)で戦えます。しかし、競争を勝ち抜くためには、デジタル・エコノミーによる変化に対応していかなくてはなりません。

デジタル・エコノミーが広告業界にもたらす変化

世界の広告業界ではブランド戦略を担うクリエイティブ・エージェンシーと、メディアプランニング・バイイングを行うメディア・エージェンシーが分業しており、それぞれが専門領域のサービスを提供していることが一般的です。

一方で、日本の広告会社は欧米とは多少異なり、クリエイティブとメディアの2つの領域が共存しながら成長してきました。そして、デジタルビジネスの成長により、グローバリゼーションとメディアのコンバージェンスが急激に進む今こそ、日本型広告ビジネスに勝機が訪れたのではないかと考えます。

それは、今後、日本型広告ビジネスが持つ、これまでの実績に裏付けられたクリエイティブとメディアの統合的なキャンペーンを企画・実行する能力と、コンテンツ・ビジネスなどに代表される特定ビジネスにおける専門知識がますます求められるようになっているからです。

デジタル・プラットフォームの台頭とともに、新しいメディアやCGMが成長し、現在、世界では1日に2700万ものコンテンツが生成されていると言われています。このような情報過多の時代、消費者の心を確実につかんでいくためには、ターゲットとするオーディエンスに対して、適切なタイミングで、適切なチャネルを活用した情報発信が必要です。これはアド・テクノロジーの進化により、ほぼ実現しています。

そして今、コミュニケーションのトレンドとしては、「アート×サイエンス」のバランスが重視されています。アド・テクノロジーの進化により情報発信の手法が劇的に効率化されるなかで、発信するコンテンツ(クリエイティブ)そのものの力が以前より増して求められており、改めて双方の最適なバランスが必要だという議論になっているわけです。このような加速的で大きな変化は広告会社のステークホルダーである広告主、媒体社、コンテンツホルダーにとって極めて重要なテーマになっています。

こうしたトレンドへの対応として、私ども電通の海外事業部門を統括しているDentsu Aegis Network(以下、DAN)は、コンテンツ(クリエイティブ)関連の領域に積極的に投資しています。またDAN傘下のメディア・エージェンシーでも同じくクリエイティブ機能を強化しています。その一例として、Dentsu mediaのシンガポール拠点であるDM2が制作したオンライン・ムービー「No Details Is Too Small」は、世界で最も権威あるデザイン・広告賞の一つと評されるD&AD 2016でペンシルを受賞しました。

 

クリエイティブ領域の能力をインハウスでも強化することで、Dentsu mediaがクライアントに提供するキャンペーン・パフォーマンスを、アド・テクノロジーを通じてだけではなく、コンテンツの力も駆使した形でさらに向上させることを狙っています。

ただ、アジアを含む世界での競争は決して生易しいものではありません。急速に進むデジタル化は、広告コミュニケーション以外にもオムニチャンネル、さらにはUberやAirbnbなどに代表される新しいビジネスモデルを創り出しています。市場環境の変化は、とどまるところを知りません。そんななかで、日本型広告ビジネスが、グローバルの広告ビジネスで勝ち抜くために、対応しなければならないポイントがいくつかあります。

次ページ 「変わりゆく消費者の「信頼」の源とは」へ続く

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Advertising Week Asia 2016
Advertising Week Asia 2016

博報堂 長谷部守彦

D2C 宝珠山 卓志

博報堂ケトル 嶋浩一郎

松田康利事務所 松田康利

ぐるなび 藤田 明久

Taro & Company 児玉太郎

TBWA\HAKUHODO 佐藤雄三

電通 頼 英夫

ツナグ 佐藤 尚之

イグナイト 笠松良彦

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