NHKスペシャル「NEXT WORLD」の取材から見えた、AIと表現の未来【後編】

【前回】「NHKスペシャル「NEXT WORLD」の取材から見えた、AIと表現の未来【前編】」はこちら

2045年には、コンピューターが人間の知性を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えると言われている。今回は、世界中の科学者や研究者を訪ねその最前線を取材したNHK スペシャル「NEXT WORLD 私たちの未来」制作チームから、番組ディレクターの岡田朋敏さんと立花達史さん、プロデューサーの小川徹さんの3人が登壇。クリエイティブディレクター加賀谷友典さんと、電通の澤本嘉光さんと未来のテクノロジーと表現について語り合った。
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写真左から、小川氏、立花氏、岡田氏、加々谷氏、澤本氏

シンギュラリティーを人はどのように受け入れるか?

加賀谷:人がなぜ「いい」と感じるかというような、意識の部分はまだ解明されていませんよね。

岡田:まったく分かっていないと言っていいと思います。意識がどうやって生まれるのかについては、取材すればするほどものすごい数の理論があって混沌としています。

加賀谷 友典 氏

加賀谷:僕は「necomimi」という、脳波で動くコミュニケーションツールを作りました。その際にも意識の問題をいろいろと考察しましたが、分からないことも多かったんです。今日初めて知って衝撃を受けたのが結合性双生児のタチアナちゃんとクリスタちゃんで、ふたりは言語を使わずにコミュニケーションができる。テクノロジーでそれをやろうとしているのが、第3回の放送に出てきたブレインマシンインターフェイスです。こういうテクノロジーは、人間にどんな影響を与えていくのでしょうか。

立花:身体が不自由な方など、本当に困っている方の助けになるためにも、サイボーグ技術はこれからどんどん進歩していかなければいけないと思っています。一方、軍事で使われるという懸念もあります。一番の問題は、その研究をやった方がいいかどうか、誰が決めるのかということです。

澤本 嘉光 氏

澤本:すごく驚いたのは、血液に注入して、がん細胞を選んで攻撃するという小さなロボットの話です。自分が思っていたロボットテクノロジーやコンピューターというものとは全く違っていて。

岡田:ロボットといっても、いわゆる金属製のメカロボットではないんですよね。分子ロボットといわれる、ナノテクノロジーやDNAの応用で、生体の中にあるDNAやたんぱく質を加工してロボットのような機能を持たせる技術です。

加賀谷:ゲノム、ナノテク、ロボティクスの3つがキーになって絡み合い、2015年を起点にわれわれの世界を完全に変えていくというのが、カーツワイル氏が唱えるシンギュラリティーです。シンギュラリティーは西海岸では盛んに研究が行われていますが、東海岸の研究者と話をするとアンチシンギュラリティーな意見が多いように感じます。番組にもいろんな意見が来ていたと思うんですが、シンギュラリティー的なものに対しては全体的に好意的だったのでしょうか?

岡田:否定・肯定の両方がありますが、特に自分の人生をAIに決められることには否定的でした。ただ、こういう見方もあります。グーグルが出てきた時、グーグルに検索ワードが知られるのはプライバシーが侵されるから嫌だと強硬に否定する人がいましたが、結局は大多数が検索機能を使うようになった。それと同じようなことが起きているのかなとも思うんです。例えば、あるアメリカの大学では、学生が自分に合う授業をAIに選んでもらっています。これは人生をAIが選んでいる事例ですが、学生達は全く否定的ではないのです。AIが選んだ授業はいい成績が取れて落第もしない、就職もうまくいくので学生の満足度は高いそうです。ですから、私はそういうふうに社会にしみ込むように入ってくるんじゃないかと思っています。

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