【前回コラム】「「ディマンド ジェネレーション」ってどうやるの?——高尚すぎる!?日本のB2Bマーケティングの実態」はこちら
B2Bがインバウンドマーケティングに移行する2つの理由
3回目となる今回のテーマはInbound(インバウンド)マーケティングです。昨今、Outbound(アウトバウンド)マーケティングは「Information Flood(情報洪水)」、「土足マーケティング」など、揶揄されることがあります。
事実、我々の会社でも売上達成が厳しくなると、決まったコンタクト先に、あの部署もこの部署も…と競わんばかりにアウントバウンドコールをかけ始めます。
もちろん、それでもある程度の成果は出ます。
それではなぜ今、インバウンド型のマーケティングに移行しようとしているのでしょうか。
ひとつにはテクノロジーの進化もありますが、それは後述するとして、ビジネス側面からの理由を挙げると、
- 購買ポイントが多様化し始めたこと
- (インバウンド型の方が)セールスサイクルを短くできること
に起因するでしょう。
B2Cの企業や、特にインバウンド型が進んでいるPC業界の方からすれば「そんなこと10年以上前から取り組んでいるよ」と、ちゃんちゃらおかしく聞こえるかもしれません。
法人顧客相手のビジネスでも、数年前からやっとその重要性が認識され始めたようです。
1の例をIT業界で挙げると、情報システム部門からBDM(Business Decision Maker)と
呼ばれる事業部門へ決定権もお金も移動し始めています。具体的には人事・総務、経営企画、マーケティングなどの部署のことを意味します。
いつものお得意様だけを相手にしているなら、御用聞きであればよかったでしょう。それがまったく接点のない部門から製品を選択してもらわなければならなくなったのですから、コミュニケーションの方法も変えざるを得ません。
それらのキーパーソンに対してアウトバウンドしようにも、住所もメールアドレスも電話番号もいかなる情報もないので、自発的に“手を挙げて”もらわなければならなくなりました。
コンタクトのみならず、会社単位でも同様のことが起きているかもしれません。製品・サービスの多様化により、今まで顧客として認識していなかった法人が、顧客化(もしく販売パートナー化)できる時代になりました。ゲームチェンジ、というやつですね。
相手の方から、われわれを探して問い合わせてもらわなければならなくなった、それゆえのインバウンド活用です。
2に触れると、“もともと興味のある人を連れてくる”ので、Closeまでのセールスサイクルを短縮化できる利点があります。案件が大型化すると、そうもいかない側面もありますが、いわゆるロングテールと名が象徴するように小口案件を呼び込むには、とても効果を発揮します。
例えば、以下の図に表現されているように、BANT(Budget:予算、Authority:決裁権、Needs:必要性、Timeframe:導入時期の4つの頭文字をとったもの。B2B営業の際に抑えて置くべきヒアリング事項)は取得でき、リードにはなるものの、セールスステージが進行しにくく訪問や説得に手間がかかっていた商談も、「溝」を勝手に超えた感度の高い状態(例えばすでに予算化している案件)で自らやってきてくれるので、非常に確率高く案件化しWinすることが可能になります。
ただ、どんなに楽にゴールを決められるからといえ、案件が小さければ小さいほど営業サイドは敬遠しがちなので、どう協業するかの課題は残ります。
自動で売れる仕組みを考えなければならない場合もあるでしょう。案件を作れど、作れど営業フォローされない…そこが法人ビジネスのジレンマですね。