話を聞いたのは・・・
石黒卓弥(いしぐろ・たかや)
メルカリ HRグループ
NTTドコモを経て2015年より現職。ドコモでは営業、人事、事業会社立ち上げ、新規事業企画を担当。メルカリでは採用を中心とした人事企画を担当。現在3児の父であり、三男出産時には2ヵ月の育休を取得。最近はツイッター発信を強化中!@takaya_i
スマートフォンを使って、服や家具、チケットなどさまざまなモノを個人間で気軽に売買できるフリマアプリが人気を集めている。このフリマアプリ市場を日本で牽引しているのが「メルカリ」だ。2013年7月にサービスを開始し、現在アプリのダウンロード数は日本国内で約2800万、月間の流通総額は100億円を超える(2016年5月現在)。2014年4月には米国、2016年1月にはヨーロッパ進出を見据えて英国にも法人を設立した、いま注目のスタートアップ企業だ。
事業の急成長に合わせ、近年同社では、新卒および中途の採用活動を積極的に行っている。エンジニアをはじめ、プロデューサー、マーケティング、人事、広報など募集職種は幅広い。この1年半で約150人超を採用し、現在の日本国内の社員数は約280人にものぼる。
特徴的なのが、入社する社員の半数以上が、社員紹介によって入社していることだ。社長や役員が、人材を募集していることをさまざまな場で発信しており、メルカリに合う人がいたら紹介するという意識が社員にも自然と染み付いている。同社の採用活動を率いるHRグループの石黒卓弥氏は、「全社目標においても、採用が上位に位置づけられています。目標達成に向けて全社員で動くという風土があり、採用活動はとても行いやすい」と話す。
これまで日本では、採用活動といえば、求人媒体や人材紹介会社を活用するのが一般的とされてきた。一方でメルカリは求人媒体への出稿は行わず、人材紹介会社を通した採用も全体の1割程度と少ない。主軸となっているのは社員紹介で、また自社の求人サイトへの直接応募から採用に至るケースも多いという。
「広告で募集しても、自分たちがターゲットとする人材は来ないケースが多いのです。私たちがまず採用で重視しているのは、メルカリの事業やプロダクトに共感しているか、ということ。そうであれば、私たち側から働きかけるというよりは、転職者から興味を持ってもらえるような情報発信が大切だと考えています」。
メルカリが「入社してもらいたい」と考えるような人材が、いつ転職したいと思うかは分からない。しかし、そうした人材が転職を検討するようになったタイミングで、メルカリを想起してもらうことが重要だ。
「転職したい人に最適なタイミングで、情報を届けることは難しい。ですから、メルカリに関する情報をこまめに発信することで、『メルカリの話題を目にしない日はない』というぐらいの状況をつくりたいと考えています」。
そうした考えのもと実践しているのが、企業広報と採用広報をシームレスに連携させること。HRチームの4人が、広報チームと同じ円卓の席に座り、常に話し合いながら活動している。
「例えば、メディアに掲載された社長のインタビュー記事の中に、採用に活用できるフレーズがあれば、それを使った求人情報をすぐに発信しています。私たちは上場企業ではないので、企業広報の主たる目的は人を採ること。企業広報=採用広報だと考えているんです」。
2015年9月の、新会社「ソウゾウ」設立の際の情報発信は、その体制の象徴的な例といえる。通常、そうしたニュースの発信に際しては、プレスリリースを配信し、自社公式サイト上にもリリースを載せておく、というのが一般的なやり方だ。しかし、メルカリではビジネスSNS「Wantedly」への投稿のみで新会社設立を発表。その結果、その投稿ページがWantedly史上でも有数のPVを集め、実際の採用にもつながったという。
「新会社設立の情報を見た人に、私たちがしてもらいたいアクションは求人への応募に尽きます。それなら、情報の受け皿は自社サイトではなくても良いのではという結論に至りました。既存の慣習にとらわれない採用広報活動を大切にしています」。
続きは、発売中の『100万社のマーケティング』2016年6月号(第7号)をご覧ください。本誌では、以下の内容についても聞いています。
◎名前だけで人が集まらない企業に必要なのは「マーケティング発想」
◎採用活動を成功させる鍵はインナーブランディングにある!?:サイバーエージェント
◎成長ベンチャーが実践する、デジタル活用の「ダイレクト・リクルーティング」:freee、Loco Partners
詳細・購入はこちら
特集ページはこちら