小池百合子新都知事の選挙戦から考える「ファンの可視化」の力

SNSを勝因の一つに挙げたことの意味

7月31日、舛添元都知事を巡る大騒動から始まった都知事選が終了し、小池百合子氏が新都知事に当選しました。

このコラムでは政治的なことに言及するつもりはありませんし、私自身が神奈川県民であることもあり、都知事選にはそれほど興味は無かったのですが、テレビ番組で小池氏が勝因を聞かれた際に、「SNSによる拡がり」を勝因の一つに挙げていたことに驚き、少しその周辺を調べてみました。

まず、主要3候補のSNSアカウントのフォロワー数を見てみると下記の通りです。

小池百合子氏 Twitter 約21万人 Facebook 約2.9万人
増田寛也氏  Twitter 約6千人 Facebook 約2千人
鳥越俊太郎氏 Twitter 約15万人 Facebook 約1万人

特にTwitterにおいては、増田氏が小池氏と鳥越氏に大きく水をあけられているのが印象的です。小池氏はTwitterアカウントを2009年に開設、鳥越氏は2010年に開設と、長らく個人で運営しているのに対して、増田氏は2016年7月と都知事選のためのTwitter開設でした。フォロワー数に大きな差があるのは、ある意味当然と言えるでしょう。

テレビ番組でも、小池百合子氏が選挙カーで移動中に自ら写真を選択して投稿する姿が報道されていましたが、SNSの使いこなし方には小池氏に一日の長があったのは間違いなさそうです。

一方、日本では2013年にネット選挙が解禁された後に、選挙時にツイッターやFacebookを開設する候補者が続出するかたちになりましたが、ほとんどフォロワー数が増えず、日本ではネット選挙はたいして意味は無いと言われることも多い結果となりました。

そういう意味で、増田陣営は自民・公明の全面バックアップを受けた上での選挙戦でしたから、従来通りの組織戦を重視しており、SNSにはそれほど力を入れていなかったのだろうということも想像されます。

それが、最終的に今回の選挙では、当選した候補者の口から勝因の一つとして「SNS」が出てくる結果になったというのは、日本では非常に珍しい現象と言えます。

おそらくは、今回の選挙が「東京都」という日本においては比較的、ソーシャルメディア利用者が多い地域での選挙だったということは間違いなく大きく影響しているでしょう。もちろん、選挙の結果に影響したのはSNSの活用だけでなく、各候補者の元々の知名度や、各種メディアでの報道など、様々な要素があるでしょうから、必ずしも小池氏がSNSによって勝利したとは言えません。

実際、日本の選挙ではソーシャルメディア利用率の高い若者の投票率が低く、ソーシャルメディアを使っていないシニア世代の投票によって大勢が決まってしまう傾向が強いですから、今回も詳細に分析してみたら同様の結果になる可能性もあるでしょう。

ただ、今回は、小池氏が都知事選の勝因として挙げている以上、ある意味初めてSNS活用が選挙結果に影響した可能性が注目される選挙になったと言えるかもしれません。

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徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)
徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

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