Welcome to the DIGITAL MARKETING!〜『マーケティングプロセス別デジタルテクノロジー導入』

株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、11月29日にマーケティングに特化した専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。創刊号の記事の一部を、「アドタイ」でも紹介していきます。
詳しくは、本誌をご覧ください。

リスティング広告など、プロモーション部分で活用されることの多いデジタルテクノロジー。しかしデジタルはマーケティング戦略のあらゆるプロセスで活用が可能です。プロセスごとに活用シーンを紹介していきます。

デジタル化が引き起こした消費行動の「断片化」

インターネットの登場以降、消費行動は大きく変わったと言われています。それに伴い、企業においてデジタルへの対応はもはや不可避な状況です。

デジタルのチャネル、メディアが生活に浸透したことで起きた、大きな変化は消費行動における販売チャネル、情報収集チャネルの断片化、「フラグメンテーション」です。

可処分所得が飛躍的に増えるわけでもなく、また当然ながら誰にとっても1日は24時間であることが変わらない中で、商品購入の際に使う販売チャネル、さらに情報を収集する際に使用するメディアに、多種多様な選択肢が加わり、だからこそ、それぞれの接点が断片化してしまい、消費者が商品を知り、検討し、購入するまでの道筋が非常に複雑化しています。

読者の皆さんも、ご自身の普段の購買行動を思い出してみると、商品を購入する場もリアル店舗だけでなく、オンラインショップ。さらにリアル店舗の中でも、ドラッグストアやコンビニエンスストア、スーパーマーケットと用途・目的に合わせて、使い分けているはずです。

携帯・スマホが増加 メディア接触も断片化

情報収集におけるメディア接触についても、テレビをはじめとするマスメディア中心だった時代から、特に商品購入に関する情報収集では、クチコミサイトやSNSでの友人の投稿など、様々な手段で情報を収集するようになっています。

間もなく2014年末。今や一般の人たちの間でも、大みそかの「NHK紅白歌合戦」の放送後には、その視聴率が話題になります。日本でビデオリサーチにより、視聴率調査が開始になった1962年、1963年頃には、80%を超えていた「NHK紅白歌合戦」の視聴率も、ここ数年は40%台になっています。

これだけメディアが多様化し、またオンライン上にはたくさんのエンタテインメント・コンテンツが溢れている中で、視聴率40%は、高い数字ではありますが、こうした現象からもデジタル化に伴う「断片化」の影響が見えてきます。

また博報堂DYメディアパートナーズは毎年、メディア接触状況を調査し、「メディア定点調査」として発表しています。

同レポートの2014年版「メディア接触時間・時系列変化<東京地区>」を見ると、週平均・1日あたりの接触時間は2014年が385.6 分と伸びていますが、2013年から2010年までほぼ353.1 分、351.4 分、350.0 分、347.9 分と1日のメディア接触時間がほぼ変わらない中で、タブレット端末・携帯・スマホの接触時間が増える傾向にあります。

メディア接触時間が今後、飛躍的に増えていくことは想定しにくいので、ここでも「断片化」の傾向が続いていくと予測されます。

行動が蓄積されるデジタル接点の強み

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ここまで見てくると、デジタルテクノロジーの浸透は企業でマーケティングに携わる方たちにとって悩みを増やすばかりの要因に思えます。

しかし、脅威になる一方で、活用次第では、現在の環境を打開する大きな武器ともなるのがデジタルの面白さです。

最近、「ビッグデータ」という言葉が取りざたされ、データの活用がマーケティングの領域でも重要なテーマになってきています。

これは、デジタルの接点が増えたことで、消費者の行動がデータとして蓄積される時代。そのデータを繋ぎ合わせていけば、断片化した消費者の行動を解き明かすことができるのではないか、という期待があってのことです。

特に、これまではマス広告を通じて商品を認知してもらった後、実際に購入されるまでの消費者の態度変容のプロセスは、ブラックボックスになっていました。

このブラックボックスも、企業と消費者のデジタルの接点が増えたことで、消費者の行動がデータとして蓄積され、その解析により、解明の糸口も見えてくる。そんな活用が今、注目をされています(図1)。

データを解析することで、一人ひとりの消費者をより深く理解でき、それぞれの消費者に合った適切なリコメンデーションができるようになる。あるいはマス広告にオンラインでの広告と、プロモーションの打ち手が増える中でも、いったいどの施策が売上に寄与したのか、その貢献度を把握して、マーケティング投資の最適化配分(*1)を実現するといった活用が考えられます。

マーケティングリサーチの世界でも、広告への接触と消費行動の関係を読み解く「シングルソースデータ」(*2)をもとにしたサービスが注目されています。

これも断片化した消費行動をいかに読み解くかという企業課題に応えるもので、こうしたデータの活用が広がる背景にも、複雑化する消費行動に対応した施策が必要との企業ニーズがあってのことです。

このように、デジタルの浸透は消費行動を複雑化させる一方で、企業と消費者のデジタルの接点が増えることは、消費行動を読み解くことも可能にしています。

*1【マーケティング投資の最適化配分】
過去のデータをもとに、様々なマーケティング施策を各項目別に、その売上への貢献度を分析。その分析に基づき限られた予算の中で、より効率的な施策別投資配分を実現しようとする考え方。

*2【シングルソースデータ】
広告と購買の関係を読み解くためのデータ。広告・メディア接触、情報の収集から購買に至るまでを同一の調査対象者から取得したもの。個人単位で広告と購買の関係、広告の購買に与えた影響、貢献度を分析することができる。

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